三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書
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「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」

2019年10月13日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

相沢沙呼の「medium 霊媒探偵 城塚翡翠」を読了。

本作に関しては、ミステリーだからという以上に、
色々と仕掛けが施されている作品だけに
その紹介もなかなか難しいのですけれども、
ひとまず、公式の粗筋を引用してみることにしましょう。

こんな感じです。

推理作家として難事件を解決してきた香月史郎(こうげつしろう)は、心に傷を負った女性、城塚翡翠(じょうづかひすい)と出逢う。彼女は霊媒であり、死者の言葉を伝えることができる。しかし、そこに証拠能力はなく、香月は霊視と論理の力を組み合わせながら、事件に立ち向かわなくてはならない。一方、巷では姿なき連続殺人鬼が人々を脅かしていた。一切の証拠を残さない殺人鬼を追い詰めることができるとすれば、それは翡翠の力のみ。だが、殺人鬼の魔手は密かに彼女へと迫っていた――。


あらかじめ翡翠の霊媒能力によって犯人が誰かの
目星がついている状態でそれを警察に納得させる、
翡翠が指摘する犯人が犯人であることを
断定できるだけの証拠などを集めていくことで
論理だてて構築していくという体裁のミステリーです。

「すべてが、伏線。」という帯の宣伝文句は
さすがにちょっと言い過ぎかもしれないものの、
最終章の展開には率直にドキドキさせられました。

これはミステリー作家としての相沢沙呼としては
最高傑作と言ってしまって差し支えなさそうです。

ネット上でも絶賛の声が溢れかえっていますが、
具体的にどこがどう面白くてお勧めなのかを
紹介をしていこうとするとネタバレになって
いかざるを得ないタイプの作品であることから、
皆「翡翠ちゃんかわいい」としか言えないのが……

ちなみに、ネットの感想を検索して見ていたら、
相沢沙呼の作品で殺人が出てきたのは、
実は本作が初めてだということを知りました。

これまでの作品は網羅して読んでいるのだから、
自分で気が付かなければいけなかった、かな?



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「母になる、石の礫で」

2019年09月30日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

どこかで一度読まなければいけないと思っていた
倉田タカシの「母になる、石の礫で」という作品を、
ふと思い立ってネット通販で購入いたしました。

この作品の内容をどう説明しようかというのが、
実は悩ましいところで、端的に言ってしまえば
簡単なもののそれでいいのか少し疑問があるので、
とりあえず、裏表紙の粗筋を引用してみます。

3Dプリンタが驚異的深化を遂げ、建築物から料理まで直接出力出来る未来。禁断の実験に手を染めるため地球を脱出したファナティックな12人の科学者は、火星と木星の間の小惑星帯にコロニーを建設していた。<始祖>と呼ばれる彼らに産み出された<二世>の虹、霧、針、そしてその下の<新世代>を含む3人は、コロニーを離れ自らの<巣>を建設していた。あるとき虹は、母性の地球から威圧的に近づいてくる巨大な構造物に圧倒される。虹たちは対策を検討するため7年ぶりに<始祖>と再会するが、それは過去に2名の<二世>を失った事件に端を発する確執の再燃でもあった――未来的閉塞環境で己の存在意義を失った異形の若者たちの惑いと決意を描く本格宇宙SF


うーん、実際これで間違いではないのですけれど、
誤解を招く紹介文のような気もしないでもありません。

本作が、<二世>と<新世代>の4人が自らの
アイデンティティーを求める物語というフレームを
持つ物語であることは、明らかな事実です。

その上で、上記の粗筋から期待してしまうような
地球と<始祖>達の対立やディストピア的な未来の
地球社会といった要素が描かれていたかというと、
実のところ、そういうものはほとんど感じられない
というのが正直な感想であったりもするのです。

作者が一番描きたい部分にのみフォーカスした
一点突破作品だと考えればいいのかもしれません。

それはそれで、アリといえばアリだとは思います。

しかしながら個人的な好みで考えるのであれば、
もうちょっとその辺りも明確に示せばいいのにな
と感じてしまわずにはおれないという意味で、
ちょっとばかり残念さも感じた作品でした。

とはいえ、生体までもが出力できるようになった
3Dプリンタや「母」という言葉・概念の使い方等、
刺激的なところも多かったのも確かなことです。

微妙に評価に困る作品、というのが結論でしょうか。


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「東京の子」

2019年09月20日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

刊行時に複数個所でちょっと話題になっていた
藤井太洋の「東京の子」は、来年開催される
オリンピックが開催された後の東京を舞台に
描かれた近未来社会派エンターテインメント。

実在する技術に関係するテーマで少し先の
未来を舞台にしたSFを描くことが多いという
イメージのある藤井太洋が、同時代性の高い
作品を発表していて、しかもそれが私の信頼する
書評家たちから総じてウケがいいとなれば、
これはオリンピックが実際に開催される
来年になる前に読まねばならないですよね。

そこで、オリンピック開幕までもう1年を切った
この時期にこうして読むことになったわけです。

帯に書かれていた公式の粗筋を紹介しましょう。

2023年、東京。パルクール・パフォーマーを15歳で引退した舟津怜は、戸籍を買い、過去を隠して新たな人生を歩んでいた。何でも屋として生計を立てる彼は、失踪したベトナム人、ファム・チ=リンの捜索を依頼される。美貌の才媛である彼女は、「東京デュアル」内にあるチェーン料理店のスタッフをしていた。オリンピックの跡地に生まれた「理想の大学校」、デュアル。ファムはデュアルの実情を告発しようと動いていたのだ。デュアルは、学生を人身売買しているのだという―。


パルクールが何か分からないという人は
ネット検索などで動画を見ていただくとして、
テーマ的には、読み手のフックとなる部分が
少しくらいはあっても良かった気もします。

しかし、広く読者に届けようという意味では、
これくらいフラットでいいのかもしれません。

エンターテインメントとして非常に質が高く、
そして近未来に起こりうることの予測としても
確かにこういうことは大いに有り得るなと思え、
とても興味深く面白く読ませてもらいました。

ちょっとでも説教くさい部分があったり、
思想的に偏りがあったりというような、
「匂い」のあるものを嫌う人も多いですけれど、
そういう作品になる可能性もあるところを
きっちりコントロールして書かれている、
誰にでも安心してお勧めできる娯楽作です。

その、コントロールされているという部分を
物足りないと思う人もいるでしょうけど……



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「僕らの世界が終わる頃」

2019年09月07日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

過去の著作を少しずつ読み進めようと思う
作家の1人が彩坂美月の作品から今回は
「僕らの世界が終わる頃」を紹介します。

これまでに数作を読んだところの感想では
青春のちょっとした苦みと、何よりも純粋さを
ベースにしたミステリー小説というのが
得意ジャンルなのかなと思っている作家です。

それは私の好みとするところでもあります。

不登校になって早一年、14歳の工藤渉は暇を持て余し、軽い気持ちで小説を書き始める。物語を作るのは想像以上に難しく、だが驚くほど楽しかった。初めての小説『ルール・オブ・ルール』をネット上で公開すると、予想外の反響が。けれどその途端、渉の身辺で怪事が続く。脅迫メール、不審な電話、そして作中の場面に酷似した殺人未遂事件。現実と物語が交錯する高次元ミステリー!!


というのが公式の粗筋になるのですけれども、
これが、ベストセラー作家の熱狂的な愛読者の
犯行だと、スティーブン・キングの作品
「ミザリー」そのままになってしまいますね。

本作は「ミザリー」とは違ってアマチュアの、
それも中学1年の時に学校で起きた事件が
原因で不登校の引き篭もりとなった主人公が
ネット上の投稿サイトに掲載した自作の
ミステリー作品がきっかけとなって起きる
事件を描くような作品となっています。

ここに、主人公が登校となった事件の関係者や
友人だったり兄弟や家族との関係だったり、
さらに初恋というような要素が絡んできて、
ちょっとした青春小説の様相もあるところが
本作の読みどころになっていると思います。

一部の登場人物に納得の行かないところが
無いわけではありませんが、それもそこまで
大きな瑕疵になっているわけではないですし、
かなり面白く読ませてもらった印象です。



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「ウェイプスウィード ヨルの惑星」

2019年08月26日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

表紙のイラストkら連想するよりも内容的には
かなりしっかりにファーストコンタクトものなのが、
瀬尾つかさ の「ウェイプスウィード ヨルの惑星」。

海水面の上昇で文明を海にのみ込まれた
地球に暮らす少女ヨルと、宇宙のコロニーから
調査にやってきた木星出身の30代の研究者
ケンガセンとの交流から、やがては物語の
舞台となっている25世紀の地球における
真実へと話は展開しくことになっていきます。

なる程、そういう展開になるのかという感じで、
ちょっと面白く読ませていただきました。

結構オーソドックスにSFをやっています。

早川書房でSFを書く場合他の出版社と違い、
もっと設定を詳しく説明してほしいということを
編集から要求されるのが面白いというのを
作家の誰かが言っていたと記憶していますが……

そういうある種の蘊蓄的なことを好む人には、
本作には不満が残るかもしれないと思えます。

一方で、設定に言及がされていないのかといえば
そんなことも無く、物語の展開と状況を知る為の
情報はしっかりと記述していると感じましたし、
そこにさらに科学的・理論的に濃い説明を
入れてほしいと思うかどうは、好みの問題でしょう。



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「ヒト夜の永い夢」

2019年08月11日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

あちこちで作者の最高傑作ではないかと言われ、
読んでみて実際その通りだなと私も思ったのが、
今年の4月に出た柴田勝家の「ヒト夜の永い夢」。

彼の著作は単行本・文庫になっているものは
これまでに一通りを読んできているのですが、
ジャンル的に昭和伝奇SFといえる本作は
過去の作品に感じてきた物足りなさもなく、
かなり厚めの文庫を最初から最後まで
一気に読み切らせる面白さがありました。

ちょっと粗筋を紹介してみましょう。

昭和2年。稀代の博物学者である南方熊楠のもとへ、超心理学者の福来友吉が訪れる。福来の誘いで学者たちの秘密団体「昭和考幽学会」へと加わった熊楠は、そこで新天皇即位の記念行事のため思考する自動人形を作ることに。粘菌コンピュータにより完成したその少女は天皇機関と名付けられるが―時代を築いた名士たちの知と因果が二・二六の帝都大混乱へと導かれていく、夢と現実の交わる日本を描いた一大昭和伝奇ロマン。


本作は一部で「昭和やべえ奴大集合」だと
言われたりもしているらしいのですけれど、
登場する実在人物たちのキャラが濃くて、
クラクラしそうになりつつ読了しました。

物語は、大きく2部に分かれてる構成です。

まず第一部は、熊楠が「昭和考幽学会」に
誘われて天皇機関の完成に協力し、
昭和天皇にそれをお披露目しようとするまで。

第二部は、お披露目が意図せぬ結果に
終わってしまった後に、天皇機関を巡って
様々な人々の思惑が錯綜していって
陰謀・野望が渦巻いていく様を描いています。

そして550ページを超える物語のヤマ場は
昭和史に残る一大事件となっています。

最後に熊楠の前に立ちはだかるのは、北一輝。

これをさながら南北対決と評した紹介記事も
あったというのはさすがに余談ですけれども、
天皇機関は、そして熊楠達はどうなってしまうのか、
それは、是非ともこれから本作を読むことで、
ご自身の眼で確認してもらいたいところです。

面白い作品だということは、保証いたします。

こうなると、帝都を舞台にして実在の人物が
活躍する伝奇モノ繋がりということで、
以前から一度読んでみようかと思いつつ
保留にしてきてしまっていた荒俣宏の
「帝都物語」も読まなければなりませんね。



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「三体」

2019年07月29日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

6月の発売以来、静かに流行しているらしい
中国SFの世界的傑作との評価も高い、
劉慈欣の「三体」をようやく読みました。

発売前に重版だとか、発売一週間で10刷超えとか、
各書店においても特設コーナーができているとか、
出版各社の文芸担当がいかにして「三体」ブームに
乗っかろうかとしているとか、色々言われている本作。

バラク・オバマ前アメリカ大統領が絶賛したり、
マーク・ザッカーバーグやジェームズ・キャメロンも
唸ったという「三体」の粗筋は、次のようなものです。

物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは?


前情報からハードなSF作品であるということで、
ちょっと覚悟をして本作を読み始めたところ、
いきなり文化大革命期の知識人迫害の容赦ない
描写から幕が上がったのでちょっとびっくりしました。

しかし本作においては、この文化大革命において
登場人物の1人が体験することになる出来事が
重要な意味を持つことが後から分かってきます。

今回の「三体」は全3部作の1作目なのですが、
物語としてはまだまだ導入部というところであり、
内容的にもボリューム的にも第2部・第3部と
進むにつれてグレードアップをしていくらしいです。

今回だけでもストーリーはかなり面白いので、
これがここから先にどのようになるのか、
かなり先が楽しみになってくる1刷でした。



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「追憶の杜」

2019年07月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

以前に『風牙』を紹介した時に早急に読むとしていた
続編である『追憶の杜』は、前作の4編に対して、
3つの中編が収録されたものになっていました。

人間の記憶をレコーディングし、他人にもわかるよう翻訳する技術を生みだした会社・九龍。創業者の不二が病に倒れてからも事業を拡大し続けていたが、記憶データをめぐって起きたいくつかの事件により、世間から非難と疑いの目が向けられていた。九龍に所属する記憶翻訳者の珊瑚は、恩師の不二と大切な居場所である九龍を守るため、事件の真相を探ろうとするが…。デビュー作『風牙』に連なる中編集。


というのが、その公式の粗筋となります。

主人公である珊瑚個人のことを描写するのが
メインだったという印象のある『風牙』に対し、
この『追憶の杜』では人の記憶のレコーディングと
共通言語化という技術が生み出す問題に
フォーカスしてきたという感じでしょうか。

普通に考えても、こういった技術が実用化されれば
道義的・倫理的なことでトラブルが起きかねない
というのは想像がつきますから、そこにどのような
回答を出してくるのかが読みどころの1つでしょう。

『追憶の杜』がその点でどこまで踏み込んだものを
書いてきたかは、残念ながら物足りないというか、
もっと深く切り込んでもいいかなと感じました。

なお、今回2つ目に収録されている「銀糸の先」は
技術の悪用者の存在が描かれたものになっています。

その件は作中ではまだ解決してはいないために、
エピソード単体としてはストーリーはまとめられており、
かつ、読み応えのある面白い話になっているのですが、
根本的なところで大きな問題が残されている形です。

これは、今後もシリーズが続くことになったならば、
この辺りが最終的なヤマ場になるのでしょうか。



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「グランド・ミステリー」

2019年07月05日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

随分前に買っていながら、そのボリューム故に
読み始めるのをついつい後回しにしていたのが、
奥泉光の書いた「グランド・ミステリー」です。

これは作品としては一部ミステリファンには有名な、
名作とか傑作とか言われてもいるものですし、
奥泉光作品を過去に何作か読んでいる経験からも、
こんな感じの作品なんだろうと予想はできました。

逆に言えばそうやって察しがついていただけに、
面白いのだろけれども読むのに時間がかかるし
気合も必要になるというイメージがあったのです。

昭和16年12月8日の真珠湾攻撃に参加した潜水艦での
艦長室にあったはずの金庫の謎めいた盗難事件と、
同じく真珠湾攻撃に参加した空母蒼龍で発生した
着艦したパイロットの操縦席での服毒死という2つの事件。

物語はそれを起点として太平洋戦争戦時下における
独特の空気感の中で上記の他にも様々な謎が錯綜し、
最後は硫黄島守備隊の玉砕で締めくくるという構造で、
ジャンルを分けるのがなかなかに難しいのですが、
一番無難なところで、やはり、タイトルにも入っている
ミステリーであるとしておくのが妥当なのでしょう。

そんな本作では、単なる純ミステリーにとどまらず、
そこにマジックリアリズム、SF、戦記的要素ほかの
様々なものがてんこ盛りの作品でもあります。

そうなると、さながら極彩色の一大絵巻になるところ、
そこはやはり太平洋戦争を題材にしていて、
初戦の奇襲成功から後、ミッドウェーでの大敗を経て
どんどんと追い詰められていく大日本帝国の姿が
描かれるのでそのような豪華絢爛な印象は全く生じず、
むしろ最初から最後まで押さえられた閉塞感の
ようなものが漂っている作品でもありました。

エピローグで描かれた本作のラストシーンは
それを大団円とまで言えるかどうかはともかくとして、
わりと爽やかな読後感をもたらすものでしたし、
なかなかに面白かったといっていいでしょう。

ちょっと、読む人を選ぶような作品ではありますが。



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「ランドスケープと夏の定理」

2019年06月22日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

高島雄哉の「ランドスケープと夏の定理」は、
第5回創元SF短編賞を受賞したという
表題作から始まる全3話の連作ハードSF。

公式の粗筋を引用してみましょう。

地球随一の天才宇宙物理学者である気の強い姉に、なにかにつけて振りまわされるぼく。大学四年生になる夏に日本でおこなわれた「あの実験」から三年、ぼくはまたしても姉に呼び出された。向かった先は宇宙空間―ラグランジュポイントL2に浮かぶ国際研究施設だ。姉はそこで誰にも知られることなく、宇宙論に関するある途轍もない実験を準備していた。第五回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる全三話。瀬名秀明が「日本SFの歴史を次の五十年に受け渡す傑作」と激賞した、新時代の理論派ハードSF。


実際に読んでみたところ粗筋で謳われているのは
伊達ではなく、これは確かに直球ハードなSFです。

そこで展開されている理論は文系脳である私には
理解できなかったりもするのですけれど、
難しくて本当の意味では理解できないとしても
そのまま読み進めてしまうとことには慣れているので、
その辺りは気にせずに最後まで一気に読み切りました。

ここで描かれる世界観や盛り込まれている設定などは
確かに難しかったりするものの、ドラマの面白さや
キャラクターの魅力がしっかりしていることもあって、
文系な私で楽しみながら読むことができたということです。

扱っているテーマは意外と古典的(つまりSFとして王道)で、
馴染みがあったのも、そこには作用しているかもしれません。

今後の活動が楽しみなSF作家がまた1人出てきました。


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