三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書

「オウリィと呼ばれたころ」

2017年10月08日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

佐藤さとる が自身の過去を振り返った作品で、
以前に紹介した「コロボックルに出会うまで」において
描かれているよりも前の時代を題材にしているのが、
「オウリィと呼ばれたころ ―終戦をはさんだ自伝物語―」。

改めて説明するまでも無いような気もしますが、
今年の2月9日に亡くなった 佐藤さとる といえば
日本の児童文学界における巨星です。

「コロボックルに~」も、この「オウリィと~」も
どちらも、そんな彼の人生を綴った自伝作品ですが、
前者は形式上、主人公の名前を変えるなどして
フィクションの体裁をとっているのに対し、
後者はあくまで自伝、という形を守っているのが、
それぞれの大きな相違点と言えるでしょう。

基本、児童文学の文法が身に沁み付いた人なので
今回も文体などはそれに沿っている感じです。

小説だからといってあれこれと心理描写をしたり
細かい描写を加えたりをしていないということもあって、
ダイジェスト版を読んでいるような気になるのは
両作品とも共通しているのですけれども、
「オウリィと~」は「コロボックルに~」と比べると、
ダイジェスト色がかなり薄めに感じられます。

それがフィクション性の有無と逆になっていて、
つまりは、ほぼ同じ語り口とペースであっても
フィクションであることにするとその密度に
物足りなさを覚えるというところあたりに、
私が「物語」を読む際に求めているものが
透かし見えるようで、ちょっと興味深いですね。

青春記には、北杜夫の「どくとるマンボウ青春記」、
ムツゴロウこと畑正憲の「ムツゴロウの青春記」、
高野秀行の「ワセダ三畳青春記」といった
広く読み継がれるべき傑作が既にありますが、
これはそれ等とはまた違う面白さがあります。



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「怨讐星域」 全3巻

2017年09月26日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

梶尾真治の 「怨讐星域Ⅲ 約束の地」は、
太陽フレアの異常膨張により焼き尽くされて
消滅してしまうことが分かった地球から、
選ばれた一部の人間を乗せて脱出した
世代間宇宙船ノアズ・アークと、
ノアズ・アーク出航後に開発された
星間転移技術を使って地球を脱出した、
切り捨てられた人々を描く作品の完結巻。

5世代を重ねる程の年数を要して両者が
移住先である「約束の地」ニューエデンで
再会するというのが、全体のヤマ場です。

転移組が抱いている恒星間航行組への
憎悪と恨みとで捻じれまくった感情が、
ノアズ・アークからニューエデンに
降下してくる人々を惨殺してしまうのか。

そのような血まみれの再開は回避されるのか。

果たしてその結果がどうなるのかは、
これから本作を読む人のお楽しみとして、
ここでは触れないでおきますが……

もしかしたら人によって、本作にはラストの
カタルシス的なものがあまり無いということに
不満を抱かれるかもしれませんけれども、
これは梶尾真治が物語の紡ぎ手として失敗した
というようなことを意味しているのではなくて、
作品の方向性がそもそもそういうところを
向いていなかったとのではないでしょうか。

私がそう思うのは、第1巻の後書きで作者自身が
「年代記のようなものが書けないか」と思って本作を
雑誌「SFマガジン」に連載した、と記しているから。

SFで「年代記」、梶尾真治の発言、ということからは
レイ・ブラッドベリの 「火星年代記」 が連想されますが、
ああいう作品に仕上げることができないかと
模索をしたのならばおそらく、散りばめられた要素が
最終巻で一気に集結して大きな物語を描き出す、
ということは無いだろうなと想像されましたから。

本作が描こうとしたのは多分そういうものではなくて、
「様々な事が一変した世界でも営まれる人の日常」
というところにあるのかもしれないと、感じました。



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「恋するタイムマシン 穂瑞沙羅華の課外活動」

2017年09月15日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

ハルキ文庫の機本伸司の「恋するタイムマシン」は、
「穂瑞沙羅華の課外活動」シリーズとしては4冊目で、
穂瑞沙羅華の登場してくる小説をカウントすれば、
デビュー作の「神様のパズル」も含めて5冊目、
スピンオフ的作品の「神様のパラドックス」は
穂瑞沙羅華が直接的に活躍する話では無いですが、
これも含めると6冊目ということになります。

ちょっと実際にはいないだろうというキャラ造形、
感情のあまり感じられない会話文というような、
私が機本作品に常々感じている違和感は
今回もいつもと同じで変わりはありませんでした。

それもこのシリーズに限って言えば
穂瑞沙羅華というヒロインがそもそも、
そういう風になってしかるべき生まれ育ちを
持っているのでそこにあまり違和感を
感じないでいられるのですけれど。

今回の「恋するタイムマシン」が扱っている題材は、
まあ、タイトルにそのまま表れていますね。

量子コンピュータの開発者である天才女子高生の
穂瑞沙羅華が営むコンサルタント業への依頼は、
両備という若き研究者がダークマターの
研究を隠れ蓑にして進めようとしている
ワームホールを使ったタイムマシン開発を、
何とかして断念させてほしいというもの。

理論物理学の天才でありながら、というか、
早熟の天才であるが故に人の心の機微が
分からない沙羅華が自分では理解できない
「愛」というものについて頭をひねる展開を経て
いつも彼女に振り回されている主人公の
綿貫との関係にも少し進捗があるという内容です。

これまでシリーズをずっと読んできた身には、
なかなか嬉しく、楽しめる作品になっていました。

正直、文系人間な私には専門的な記述部分は
10の内の半分くらいしか理解できないのですが、
そこは雰囲気で読み流せば問題ありません。

このシリーズは今年5月に最新刊にして最終巻が
発売されているので、それも、早めに読まなくては。



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「スーパーカブ」

2017年08月27日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

1冊全てから、著者がいかにスーパーカブが好きか、
という情熱がほとばしって溢れ返っているのが、
トネ・コーケンの 「スーパーカブ」 という作品です。

本作の物語は非常にシンプルなもので、
山梨の北杜市で無利子の奨学金をもらいながら
高校に通っている少女、小熊を主人公にして、
何に対しても欲の無かった彼女がある日
中古のスーパーカブに出会うことで、
その世界が開けて行く様を描く、というもの。

それを見る限りは非常に地味な作品であって、
尖った部分もほとんど無いなと思うかもしれません。

実際、内容的に地味であることは、否定できません。

とはいえ、これはそういう派手さを求めるタイプの
作品ではなくて、小熊が一歩一歩成長するところ、
スーパーカブが次第に相棒になっていくところなど、
そういうところを読んでいくべき作品だと言えるでしょう。

何気に充実した読書となる、そういうタイプです。

私がカブを持っているか、持っていたことがあると、
作中に出てくる色々な「カブあるある」ネタを
更に楽しめたのかもしれませんが、
そういうのを抜きにしても、これは非常に面白く、
佳作と言っていいのではないでしょうか。

ちなみに、スーパーカブはこの2017年で
世界生産累計台数が1億台を突破する予定だと
以前にどこかで読んだ覚えがあります。

本作にも、帯に「ホンダ・スーパーカブ総生産台数
100000000台記念作」の文字が印字されていて、
とはいえ、それで特に HONDA とタイアップを
したりとかはしていないようなのですけれども、
そういうところもまた、ちょっとした好感度を覚えます。


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「彼女の色に届くまで」

2017年08月17日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

似鳥鶏の「彼女の色に届くまで」は、画廊の息子で
画家を目指している高校生である主人公の緑川礼と、
ふとしたきっかけで知り合った無口で謎めいていて
絵が上手い同学年の少女の千坂桜とが絵画に関連して
起こる様々な事件を解いていくというミステリー。

こういう作品の常として、個々のエピソードそれぞれでは
特定の絵画が取り上げられていくのですけれども、
本作がちょっと違うところは、その絵画そのものに関して
何らかの事件が起きる、それに絡む謎が解き明かされる
というのではなく架空の画家の架空の作品に関して
発生する事件について、探偵役である千坂が
世界的な名画をヒントに謎を解くというところでしょう。

作中で登場した名作絵画は、サイズは小さいものの
巻末にカラー印刷で図版が載っているというのが、
美術に打止めの読者にも新設設計でいいですね。

その中に1枚だけ作者名がないのは何故か思ったら、
これは実際、作者が不詳ということらしいです。

また、もう1つの本作の特徴として挙げられるのは
作中での経過時間の長さで、こういうミステリーはとかく、
短い高校生活3年間の間に主人公の周辺で
どういうわけか立て続けに事件が起きるという
不自然さが付き物だったりするしますよね。

本作の場合は全部で5つあるエピソードについて
1つが終わるたびにしっかりと時間が経過しているので、
主人公達が高校時代、大学、そして社会人になるまでの
一定の年数を描く作品となっているのです。

ボーイ・ミーツ・ガールな恋愛モノとしてはどうかというと、
それだけの時間が作中で流れるわけですから
その辺ももどかしい関係ながらしっかりと描かれています。

この手の作品は人気が出た場合にシリーズ化する
というのも考えられて書かれたりもしますけれど、
本作の場合は最終第5話の段階で色々なことに
かなりしっかり区切りがつけられており、
ここから先の続きが想像しにくい感じになっています。

主に「ラブ」な部分で不満が残るという人もいましょうが、
これは読者それぞれが好きに想像していけば
いいんじゃないかな、というのが、私の感想。

最後に明かされる真実も、そう来たか、という感じ
で楽しませてもらったし、これは、お勧め作品です。



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「血と霧」

2017年08月07日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

ブログにおける本人の記述にあるように昔から
書きたくてたまらなかったハードボイルドテイストに
挑戦した作品だというのが多崎礼の「血と霧」。

非常に面白く、優秀なエンターテインメントです。

ここでその内容について何か書いてしまうと
この作品をこれから読もうという人にとって
興醒め極まりないことになるので避けておきますが、
最後まで、ハードボイルドであったと同時に、
深く一途な愛の物語であったと言えます。

決して大団円ではないラストをどう受け止めるかは
読者それぞれによるところではありますが、
私としては大いに満足のいく内容でした。

それに、ハードボイルドに攻めるのであれば
なるべくしてなる、というか、このテーマで、
この展開であればこれしか考えられない、
こういう結末になるしかないという感じです。

文庫本にして2冊で全6話で構成されている物語は、
もっと丁寧かつ細かく描いて行こうと思えば
それはそれでできたのでしょうけれども、
むしろ必要なことのみを絞って描いたことで、
全体にストイックさが増したように思えます。

それは、本作の場合にはプラスに働くことですよね。

セールスの面でも成績は悪くなかったらしいので、
全3部作として構想されているという本作の第2部、
第3部の刊行も大いに期待されるところになりますが、
一度に一作品にしか手を付けれないという多崎礼が
今は別の作品を書いている途中ですので、
続きが出るにしてもそちらが終わってからでしょう。

それまで早川書房と読者が待っていてくれるか、
例えば1年後、2年後に続きが出るとして、
それでも読者がついくるかが心配どころですが
ここは、なるようになると思うしかありませんね。

これは、多崎流ハードボイルドの傑作です。



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「魔導の福音」

2017年07月28日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

佐藤さくら の「魔導の福音」は以前にここで紹介した
第1回創元ファンタジイ新人賞で優秀賞を獲った
「魔導の系譜」に続く「真理の織り手」シリーズの第2作。

舞台となる国家と主人公は第1作と違いますが、
時代は同じで、後半には前作の主人公も登場します。

ライトなものや異世界モノ等が主流なジャンルの現況の中で
かなり骨太でとことんシリアスな物語を展開した前作に続く
シリーズ2冊目ということで、今度はどんなストーリーを
提示してくるかとちょっと構えて読み始めることになった本作。

前半部分において、地方の小領主の息子が
都で学ぶ中で新たな友人等と出会い青春を謳歌する
というような学園モノ的なテイストもあったからでしょうか、
それなりの厚みと、1ページ当たりぎっしりと活字が
詰まっている文庫であるにも関わらずかなり読みやすく、
想定以上にすんなりと最後まで読み終えることが出来ました。

話そのものは第1作目も今回の第2作目もどちらも
かなり面白いのですが、読みやすさ、という点では、
こちらの方が圧勝だったかなという感じです。

それは、読者に物語を届けるのにプラスに働きますし、
何より、書店で見かけてページを捲ってみた時に
これならば読んでみようかな、買ってみようかな、
と思ってもらう為にはかなり重要なことではないでしょうか。

自分の書きたい世界を全力で描いたのは解るものの
少々生硬なところもあった 「魔導の系譜」 に対し、
本作の執筆に際しては読者の存在を意識したのかどうか、
そういうことは不明ですけれど、こういう感じでくるのであれば
この先もシリーズを追ってみようかなと思いました。

「魔導」というものの扱い方等の世界設定、
キャラクターの魅力、そして物語の読み応えと、
3つの要素がなかなかのレベルでまとまっている、
いい感じの1冊だったので、これは大満足。



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「青い海の宇宙港」

2017年07月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

2015年から2016年にかけて雑誌 「SFマガジン」 に
連載された作品が「春夏篇」と「秋冬篇」の2冊構成で
単行本となったのが川端裕人の「青い海の宇宙港」。

明らかに種子島がモデルである南の島、多根島を舞台に
いわゆる「山村留学」的なものである「宇宙遊学生」の
参加メンバーである主人公他の少年2人と少女1人、
そしてと地元の少女1人を加えたメンバーが結成した
宇宙探検隊の活躍を描く作品となっています。

多くの人が協力してロケットの打ち上げを成功させる
というようなタイプの物語にもともと私は弱くて、
同じ川端裕人のデビュー作である「夏のロケット」なども
好きな作品であり、本作にもかなり期待していました。

ちなみに、その「夏のロケット」と本作は同じ世界、
同じ時間軸にある物語ということになっているのですが、
本作の前に「夏のロケット」を読んでおかなければ
分からないようなことは特にありませんので、
その点についてはご安心いただいて大丈夫です。

まあ、「夏のロケット」も非常に面白い作品ですので
未読の方はこれをいい機会として是非、
手に取ってみていただきたいところですが。

本作の物語が、小学生達が大人の協力を得つつ
本格的なロケットを打ち上げるものになっているのには、
既存の古い技術を使っていて新規開発をする
必要が無いからといってさすがにそれは不可能で、
無理があり過ぎるだろうという意見もあるでしょう。

その辺については、本作で描かれているような
条件が揃えば不可能ではないというような
技術的な裏付けなどもされているようですし、
物語が面白くて作品内で破綻や綻びなく
整合性が取れているのであれば、
そこを突くのも野暮なのではないでしょうか。

もちろん世の中には、それでも細かい粗が
気になって仕方が無くなるようなものが
存在するというのも確かなことではありますが、
この「青い海の宇宙港」という作品については
とりたてて問題は無いだろうと私は考えます。

これは、できるだけピュアな気持ちで読むべき物語、
現役小学生……にはちょっと難しいかもしれませんが
せめて中学生に読んでほしいような、そんな物語です。

例えば、読書感想文の宿題用に、とか。



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「ニルヤの島」

2017年07月08日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

このブログでは紹介していないのですけれども、
以前読んだ「クロニスタ 戦争人類学者」という作品が
かなり面白かったので、これならば同作者の
他の作品も読んでみなければならないかなと、
実在の戦国武将の名をペンネームにした
柴田勝家のデビュー作「ニルヤの島」を購入。

個人の人生の全てをログとして記録し再生できる
生体受像(ビオヴィス)という技術の発明により、
自分という存在が世界から永遠に失われてしまう
「死」というものに対する恐怖が薄れた結果、
死後の世界という概念が否定された未来世界。

円環状の大環橋(グレートサーカム)で繋がれた
諸島国家であるミクロネシア経済連合体。

そこを訪れた文化人類学者イリアス・ノヴァクは、
現地ガイドとして雇用した日系の若者ヒロヤの
祖父である、死出の船を作る老人と出会います。

法王さえも天国の存在を否定した時代において、
死した後に人は「ニルヤの島」に行くと訴える
「世界最後の宗教」統集派が勢力を拡大しつつある
ミクロネシアで行われる、人の生と死、
そしてその魂を導く実験とはいかなるものなのか。

というような話なのですが、改めてこの文を書く為に
ストーリーラインを頭の中で整理してみると、
わりとシンプルな物語であることに気が付きました。

しかし、実際読んでいる時には色々な要素が
錯綜する複雑な話だと感じていたのは、
おそらく、全部で4つのエピソードが
並行的かつ複層的に、時間軸を前後したりしながら
綴られるという構造を、本作が持っているから。

もちろん、そうなっているのにはストーリー的な意味でも
作品のテーマ的な意味でも必然があるのですけれど、
それ故に一読しただけの状態では取っ付きにくい、
ちょっと難しい物語に感じられるのは確かなことでしょう。

「クロニスタ~」もそういうところがあったのですけれど、
人の記憶や意識の外部へのバックアップ、共有化は、
柴田勝家が追いかけている大きなテーマなのかも。

彼が大学院で研究しているという文化人類学的な要素も
色濃く出ていて、独特の雰囲気をもたらしています。

この「ニルヤの島」は、2014年に開催された
第2回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞しており、
審査員にかなりの絶賛を受けたそうなのですが、
それもなる程なと納得できる、そんな力作でした。



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「ビッグデータ・コネクト」

2017年06月28日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

これまでに読んだ作品の完成度と読了後の満足感から
かなりの期待を持って読み始めることになったのが、
藤井太洋の4つめの長編 「ビッグデータ・コネクト」 です。

タイトルを見ただけでも何となく分かるでしょうけれど
マーケティングの分野で何かと取りざたされることの多い
「ビッグデータ」が今回の題材となっているのですが、
裏表紙の内容紹介をちょっと引用してみましょう。

「京都府警サイバー犯罪対策課の万田は、ITエンジニア誘拐事件の捜査を命じられた。協力者として現れたのは冤罪で汚名を着せられたハッカー、武岱。二人の操作は進歩的試聴の主導するプロジェクトの闇へと……。行政サービスの民間委託計劃の陰に何が?ITを知り尽くした著者が描くビッグデータの危機。新時代の警察小説。」


ビッグデータを商業的に利用するというのは
プライバシーの侵害と密接に関わってきます。

ネット購入や実店舗でのクレジットカードの履歴、
カード番号に暗証番号、Suica 等の利用状況から
導き出される生活圏や移動範囲の情報、
住基カードやマイナンバーから分かる住所や本籍地、
その他諸々のビッグデータがあれば、
その人のことがデータ的に丸裸にできるわけです。

だからこそ、こういったデータの管理と収集・利用には
慎重の上にも慎重を重ねなければならないのですが、
実際の世の中がどうなっているかというと、
故意のものもそうでないものも含めデータ流出の
ニュースが頻繁に発生しているというのが現実ですよね。

なので私としては、それが官主導・民主導であるを問わず、
ビッグデータを収集するということには懐疑的であり、
できればその対象となるのは御免こうむりたいと思っています。

「ビッグデータ」が「コネクト」される状況を題材にした本作は
だからこそ余計に非常に興味深いものであり、
大いに関心をもって読ませてもらったのですが……
いや、これはかなり面白くて刺激的な作品ですね。

ビッグデータを利用する様々なサービスが進む現状に対し
その問題点、その危うさ、その不透明さなどを訴えていく。

そんな作品になっているこの作品なのですけれど、
しかし、それより何より強烈に印象に残るのが
システム開発事業にみられる中抜きに次ぐ中抜きと、
何次請けかカウントするのも馬鹿らしくなるくらいの
下請けばかりが薄利な上に持ち出しばかりで苦労する、
あまりといえばあまりにブラックな労働環境への糾弾。

作者は過去に実際にITエンジニアとして
働いていたことがあるらしいのですが、
だからこそ、この辺りの一連の描写に
これだけのリアリティーがあるわけですね。

これはあくまでフィクションにすぎないのであって
実際にはこんなことは無い、と言えればいいのですが、
実際は、同様のことが今も現実にそこかしこで
行われているというのが本当のところなんでしょうね。

これは、間違ってもITエンジニアだけにはなるなよ、
と自分の子供など言いたくなるレベルの話です。

まあ、私は独身であり子供はいませんけれど。



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