三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書
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「あとは野となれ大和撫子」

2018年12月04日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

宮内悠介の「あとは野となれ大和撫子」を読みました。

以前に読んだ「盤上の夜」は結構渋めの内容のSFで、
しかし娯楽要素もあって非常に面白い作品でした。

それだけに、こちらにも大きな期待がかかります。

本作については、ご都合主義的な展開だとか、
無理が過ぎるとか、そういう批判をしばしば目にします。

が、主人公たちの暮らすアラルスタンが隣国のエゴに
無残に蹂躙されたり、革命勢力が跋扈することで
主人公たちが酷い目にあったり、無残な死、無慈悲な死が
大量に発生したりという展開は、例えそれこそが
リアルな姿なのだとしても、それを娯楽小説である
本作に求めようとは、私としては全く思いません。

無論、人の好みはそれぞれなので、
自分としてはそういうものをこそ読みたいのだ、
という人もいることを否定はしませんけれど。

本作はそういうハードなタイプの小説ではなくて、
もっと気楽に、余計なことを深く考えず、
頭を空っぽにして、後宮で学ぶ少女達の活躍を
素直に楽しむタイプの作品だと思います。

カリカチュアライズしながらも中央アジアの政治的状況を
何気にシリアスに盛り込んだりしているので、
地に足がついている感もあって楽しませてもらいました。

これは、宮内悠介の書いた他の作品も、
もっと色々と読んでみなければならないかな?



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「ぬばたまおろち、しらたまおろち」

2018年11月21日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

第2回創元ファンタジイ新人賞の優秀賞受賞作が
白鷺あおい の「ぬばたまおろち、しらたまおろち」で、
筑波大学の出身だという著者はこの作品の前に
別の名義で2冊の歌集を出している歌人らしいです。

1967年の生まれだそうなので2016年に本作で
受賞した時の年齢は49歳ということになりますね。

作家デビューとしては遅めかもしれないのですが、
他にもこんな例は幾つか思い浮かびますし、
これくらいはそこまで珍しく無いかなという気もします。

十代の多感な少女を主人公としたジュヴナイルな
ファンタジーを書く際にネックとなるかもしれませんが、
本作は、まさしくそのジャンルの小説なわけで、
そこがどのようにこなされているかを楽しむのも、
少し意地は悪いかもしれませんけれども、
読みどころの1つになるのではないでしょうか。

巻末の選評で各選考員が書いているように本作は
基本的に「どこかで読んだ」ような要素の積み重ねで
成り立っている物語であって新鮮味はありません。

それをどのようにアレンジしてみせるのかとか、
あるいはアレンジとまではいかないまでも
組み合わせを工夫してみるというところも
書き手の腕の見せ所ではあるのですが……。

自分の好きなものを詰め込むだけ詰め込んだ上で
ガール・ミーツ・ボーイなところに落とし込んだ構成や、
みえみえとはいえお約束を踏襲したオチとかは
それなりに良かったのですが、物語の展開の一部に
大いに疑問を覚えて、その違和感が最後まで
抜けきれなかったのは、結構なマイナス要素です。

そうでなければ話が回らないという事情は
確かに分からなくもないのですけれども……。

そのような問題点はありつつもそれなりに
面白く読ませてもらったのも事実ですから、
本作はシリーズ化されて第2巻も出ているので、
一応、そちらも読んでみるつもりです。



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「アトミック・ボックス」

2018年11月09日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

瀬戸内の離島で漁師をしていた父が死の間際に
残した物を巡り大学で社会学の専任講師をしている娘が
公安の追跡を振り切って広島から東京に向かうという、
池澤夏樹の「アトミック・ボックス」を読了しました。

作品のタイトルが既にその内容を示唆していますし
裏表紙の粗筋でも書かれてもいることなので
ここでも特に遠慮せずに書いてしまうことにしますが、
実は彼女の父はかつて国産の原子爆弾開発計画に
関わっていたことがあって計画が頓挫した後も
ずっと公安の監視対象になっていたのです。

その計画の一部を記録した機密資料を託された彼女が
遺されたものをどのように扱うべきか、公表すべきかを
迷っている内に父親殺人の容疑で指名手配されてしまい……
というような導入から始まる本作の物語はどうやら
「冒険小説を書きたい」ということが動機で書かれたよう。

なる程、確かにこれは冒険小説だとも言えると思いますが、
そのフレーズを聞いた瞬間に想像されているような、
血沸き肉躍る大冒険、というようなものではありません。

裏表紙の粗筋にはサスペンス小説と書かれていますが
そこまでギリギリの緊張感が続くようなものでもなくて、
そんな感じに、冒険小説ともサスペンスとも言い切れない
作品ですが、決してつまらないというわけではありません。

これは別に扱っている題材が政治的に敏感なものであること、
そして、「これはあの人の事だな」と実在の某有力政治家を
はっきりと類推することができるキャラが出てきたりすること、
といった要素から筆の勢いが鈍ったというわけではなくて
物語の基本に「家族の物語」というものを持ってきた以上は、
むしろ当然の帰結だったではないかなと思っています。

その他のマイナス要素として、ネットでの拡散について
登場人物達の認識の甘さが気になるシーンがあった、
というものもあるのですが、池澤夏樹の年齢を考えれば
この辺りは致し方ないところでもあるといえましょう。

ストーリーの本筋に絡む部分でもありませんし、
池澤夏樹ならもっと凄いものにできたのではないか
という不満はあれど、なかなか面白い作品でした。



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「ユートロニカのこちら側」

2018年10月27日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

以前に紹介した「ゲームの王国」が面白かったので、
こちらも読まなければならないかなと思っていた
第3回ハヤカワSFコンテストの大賞を受賞した小川哲の
デビュー作「ユートロニカのこちら側」を読みました。

タイトルにもなっている「ユートロニカ」というのは
ユートピアとエレクトロニカを合わせた造語ですが、
前者は分かるとして、何故、音楽のジャンルである
エレクトロニカを使っているのかということについては、
文庫版巻末の入江哲郎の解説を読めば分かります。

要は、エレクトロニカの持つ浮遊感や抒情性が
作品の方向性に合致しているらしいのですが、
私はエレクトロニカのCDも何枚か持っているものの
その感覚は正直今一つ分からなかったりします。

でもまぁ、こういうのは名付けた本人が納得していれば
それでいい話で特に問題は無いのではないでしょうか。

巨大情報企業が、様々な個人情報、位置情報から
視覚・聴覚、嗜好、行動等のありとあらゆる全てを
その企業に無条件で提供することで居住許可を
得ることができる実験都市アガスティアリゾートを建設。

情報提供には対価が支給されるので、それだけで
平均以上の豊かな生活を送ることができます。

ちょっと前からニュースになったりもしている
ベーシックインカムという概念とはちょっと違いますが、
飢えることも無く、プライベートを売り渡しているとはいえ、
ただ暮らしているだけで一定の収入が約束された都市。

この、ある意味では理想郷ともいえる都市が真実、
ユートピアと呼べるものなのかを突きつけているのが
6つの短編から成る本作で、ある種、ディストピア小説です。

あちらこちらでビッグデータの活用が声高に叫ばれ、
もしかしたら私達も知らないところで様々なプライベートを
切り売りさせられているかもしれない最近の社会を考えると、
本作についても、ついあらぬ深読みをしてしまいそうですが、
さすがにそれはやり過ぎで、あまり意味はないかもしれません。

SFコンテスト大賞というのが納得の、良い作品でした。



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「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」

2018年10月15日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「猫河原家の人びと 一家全員、名探偵」は、
なかなかいいペースで新刊を出し続けている
青柳碧人が今年の6月に出した作品です。

現役の警察官である父親を筆頭にして
謎と事件が三度の飯よりも大好きだという
困った一家に生まれ育った次女が、
そんな家族に反発しながら何のかんのと事件を
解決することになってしまうユーモアミステリー。

本作の事を紹介するとそういうことになります。

ですが、扱うのが日常の謎系の事件ではなくて
普通に殺人が起きている刑事事件なので、
これを単なるユーモアミステリーと言うのは
不謹慎だという人もいらっしゃるかもしれませんね。

事件好き、推理好きな人々がてんで好き勝手に
自分の推理をぶちかましていくという構図は、
中井英夫の傑作『虚無への供物』思い出させます。

ですが、こちらは推理をひけらかす面々があそこまで
メーターが振り切れているような強烈さではなく
ある程度常識的な範囲での推理合戦なので、
その点での読み応え、面白さはあまりありません。

それと、家族それぞれのキャラ付けも今一つ弱いかな。

どうせカリカチュアライズするのであればもっと、
やり過ぎなくらいまでやってしまっても
あるいは良かったのではないかと思います。

そういう点で、ちょっと物足りなさが残る作品でした。


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「ペンギンは空を見上げる」

2018年10月04日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

八重野統摩の「ペンギンは空を見上げる」は、
北海道に住んでいる、とある少年が抱いている
宇宙への憧れを描いている物語です。

と、それだけではイメージし難いでしょうから、
少し長いですが、公式の粗筋を引用します。

将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船宇宙撮影を目指しています。できる限り大人の力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底なれないから、と。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生の女の子が現れて……。ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘するこの少年を、きっと応援したくなるはずです――読み終えたあとは、もっと。


ミステリ・フロンティアという名前のレーベルから
刊行されている作品でもありますし本作は一応
ライトミステリーに分類されてもいい作品です。

ですが実際に読み終えてみ多段階では
ミステリーを読んだ実感はあまりありません。

ライトSFあるいはジュヴナイル作品を読んだ、
というような印象、それもちょっと良質なものを
読んだなという印象が残っている1冊でした。

少年、宇宙、ペンギンという組合せからは、
森見登美彦の傑作「ペンギン・ハイウェイ」が
自然に連想されてくるのですけれども、
本作はあそこまでがっつりSFに寄せてなく、
どちらかというと川端裕人の「夏のロケット」や
あさりよしとお の「なつのロケット」に近い
読後感のある作品だったと言えると思います。

なお、何故「ペンギン」なのかということは
最後まで読めば分かるようになっています。

書店で見て「これは私のツボにはまりそうだな」と
思って迷わずにそのまま購入することを決め、
実際にツボにはまったという本作、結構お薦めです。


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「名探偵誕生」

2018年09月22日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

各所のコメントで結構評判が良かったこともあり、
当初は大人しく文庫化を待とうかなと思っていた
似鳥鶏の 「名探偵誕生」 を思い切って購入しました。

粗筋を紹介してみます。

「神様。どうか彼女に幸福を」――王道かつ斬新。似鳥鶏が放つ直球の青春ミステリー!となり町の幽霊団地に謎の「シンカイ」を見に行く――小学4年だった僕は、学校の友だちとささやかな冒険に出た。その冒険に不穏が影が差したとき助けてくれたのが、名探偵の「お姉ちゃん」だった。彼女のとなりで成長していく日々のなかで、日本中を騒がせることになるあの事件が起きる――。ミステリとしての読み応えと、青春小説としての瑞々しさが高純度で美しく結晶した傑作。著者ならではの軽快な筆致で読みだしたら止まらない、老若男女すべての方におすすめしたい作品です。「名探偵の初恋と青春。だけど、誰もがちょっとなつかしい、『あの頃の僕』のお話しです」――似鳥 鶏」


魅力的な年上のお姉さんへの憧れというのは
ジュヴナイル系の作品では鉄板の設定です。

本作の場合は、そのお姉さんが名探偵となって
様々な事件を解決していくという流れなのですが、
第一話では小学生四年生だった主人公が
段々と年齢を重ねていくという仕掛けは、
著者の以前の作品と同じ構造になりますね。

年上への美人への恋心や思春期のもやもや、
実らぬ気持ちの苦さとか、そういうものを
もっと情感を込めて描くのもやり方としては
あるかもしれませんが、本作はその辺り、
結構ドライな文体で書いて済ませています。

それは本作が、大人になっている主人公が
過去を振り返るという視点で語られるという
構図になっているというのが大きいでしょう。

それが読者の感情移入を拒んでいるかというと、
むしろある程度の年齢に達している人にとっては
一種ノスタルジックな読み心地を与えてくれるものに
なっているのではなかろうかと私は感じました。

逆に、今まさに十代真っ盛りというような若い読者、
あるいはまだ成人して間もない20代前半の読者、
といった層にこの造りがどこまで響くのかは不明です。

「美人で知的なお姉さんへの憧れ」という部分は
いわゆる「おっさん殺し」な要素となりますしね。

ともあれ、この「名探偵誕生」はなかなか楽しく
読ませていただける作品であることは事実であり、
素直に人にお薦めできる作品だと思います。


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「魔導の黎明」

2018年09月10日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「真理の織り手」シリーズ最終巻が「魔導の黎明」。

ここまでシリーズを通してずっと描かれてきた
魔導を持たない者が魔導士を差別する社会と、
それに反発した一部の魔導士が起こした反乱、
そのような中でかすかに見え隠れする希望、
それ等がこの1冊でどのような結末を迎えるのか。

創元推理文庫から出るハイファンタジーなs区品は、
ハードかつシリアスな方向に行く傾向がある
という印象が私にはあるのですけれども、
本作もその流れにのったものの1つだと思っています。

とはいえ、多少のコメディー要素が無いわけではなく、
そのおかげで、息苦しさに圧し潰されることなく
読めるようにもなっているのは、指摘しておきましょう。

そんなシリーズの最終作である「魔導の黎明」は、
その作品タイトルが示唆しているような
作品世界に対して未来への希望や明るさを示しうる、
夜明けを感じさせるものになっていたのでしょうか。

その判断は読者それぞれが行うべきものですが、
「えっこれで終わり?」と思う人も多分いというのが
容易に想像がつくような終わり方になっています。

しかし、ここまで描かれてきた物語からすれば
安易な終わり方をするのも違和感がありますから、
個人的には、これはこれで作品内容的には
正解なのではないかなと考えています。

なかなか面白い物語を読ませてもらいましたから、
作者の次回作には期待をしたいと思います。


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「プラネタリウムの外側」

2018年08月28日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

2016年から2017年にかけて「SFマガジン」に
掲載されていった4編に書下ろしを加えた
全5編からなる早瀬耕の「プラネタリウムの外側」。

これは、以前にこのブログで紹介した作者のデビュー、
「グリフォンズ・ガーデン」の後日譚となる連作短編集。

同作の登場人物が出てきたりするわけでは無いので
どちらを先に読んでも特に問題はないでしょうけれど、
基本的にはやはり刊行順に読んでおくというのが、
この手の作品を読む時のセオリーですよね。

そんなわけで「グリフォンズ・ガーデン」を読んでから
「プラネタリウムの外側」という順にこだわって
読んだのですけれども、そうするとはっきりと分かるのが
この2作品はそれぞれ同じようなテーマを持っていて
まさしく四半世紀の時を挟んで生まれた
双子のような関係にあると言えそうだということ。

26年も誕生日の違う双子は論理的にあり得ない、
というご指摘は、この際は無用に願います。

まだ作者が大学生の頃に卒業論文の一環として
書かれたという「グリフォンズ・ガーデン」と、
50歳辺りに書いた「プラネタリウムの外側」とでは
自ずと違ってくるものもあるわけですけれども……

世界は自分が認識するから存在しているのではないか、
世界も他人も自分の頭の中にしか存在しないのでは、
自身も誰かがシステム内に作った存在なのではないか、
というような昔からの定番である哲学的テーマに
人の実存とAI技術とを絡めるところとか、
精神的にピュアさの高い恋愛をそこに絡めるところとか、
明らかに対になっている作品といっていい思います。

若さ故の青臭さがあり、卒業論文として書かれたことで
ロジックを捻るような章もあった「グリフォンズ~」に比べ、
本作の方が一般的な意味での「小説」になっているので、
読みやすさはこちらが上といってもいいかもしれません。

これまで早瀬耕の作品は3つ読んできましたけれど、
それ等に見られる恋愛要素の色付けが共通していて、
これがつまり彼の恋愛観なんだろうなと感じました。

こういう考え方、嫌いじゃないです。



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「重力アルケミック」

2018年08月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「横浜駅SF」で強烈なデビューを飾った柞刈湯葉が
その2ヶ月後に発表した「重力アルケミック」は、
膨張していく世界が舞台という点において
「横浜駅SF」と通じるところがあるとも言える1作。

横浜駅が自動工事で際限なく拡大を続けて
日本全土を覆いつくさんとするという「横浜駅SF」と、
重力を司り、化学的に転換すれば反重力を得られる
「重素」の過剰採掘で大地の膨張に歯止めがかからず、
東京~大阪間の距離がついに5,000キロを
突破したという世界を舞台にした本作とでは、
設定は異なっているのですけれど、この両作品は
「拡張」というキーワードで括ることもできそうです。

ただし、両作品の共通項と言えるのはそこまで。

その設定の上で繰り広げられる物語はかなり違い、
一種ロードムービー的な作品の「横浜駅SF」に対し
この「重力アルケミック」は特殊な世界設定の上で、
それでも私達の世界のそれと大差なく繰り広げられる
理系大学生の淡々とした大学生活を描くという内容です。

それは森見登美彦の得意とする「腐れ大学生モノ」的な
暴走と脱力を迸る妄想で彩るかのようなものではなくて、
本当に平凡な学生生活が紡がれていると言えます。

一応ヤマとなるイベントはあるのですけれども、
もともとの下地が「淡々とした学生生活」にあるからか、
作品自体の大きなクライマックス感はまるでありません。

「膨張し続ける大地」という大ネタを仕込んでいながら
それに係るエンターテインメント的なカタルシスが一切ない。

そこが本作のいいところだ、というのが、個人的な感想。

愛想の少ないヒロインをどう思うかは人それぞれですが、
私としては、そこもしっかりと楽しく読ませてもらいました。

前作程の破壊力はないものの、なかなかの佳作ですね。



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