三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書

「ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐Ⅱ」

2018年02月17日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

全2巻の「ストーミー・ガール サキソフォンに棲む狐Ⅱ」は
県大会から西関東支部大会までは例年進めているものの、
そこで上位3位に入れずにいつも4位どまりで
全国大会出場を逃している須賀瀬高校の吹奏楽部で
アルトサックスを担当する1年生の典子を主人公にした作品。

色々とあった結果、吹奏楽部を退部し、
ジャズの道を歩むことを志し始めた典子。

とはいえ、まだまだジャズに関する知識も何もないので
個人レッスンを受けるなどして技術と知識を得つつ、
メンバー募集中の大学生達のジャズトリオにも参加したりして
その腕を磨き、才能を徐々に開花させていくのですが……

そこに、彼女の出生の秘密、母親と父親の過去が絡んできます。

ここをあんまり具体的に書くとネタバレになりますから
この辺りで止めにしておくこととしますが、
これがなかなかシビアでスリリングなものとなっているので、
物語はかなり派手に盛り上がりを見せることに。

読み始める前には、まさかこういう方向の話とは
思ってませんでしたけれども、いや、これはいいですね。

青春部活モノや明朗快活な音楽モノということには
なっていない作品ではあるのですけれども、
少しサスペンスの入ったミステリーとして、
なかなか面白く読ませていただきました。




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「深海大戦 Abyssal Wars」

2018年02月07日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

私の好物の1つとも言える海洋SFジャンルの
全3巻からなる藤崎慎吾の大作小説が、
「深海大戦 Abyssal Wars」になります。

深海を舞台に、海に生存場所を求めたシー・ノマッドと、
陸上にある旧来の国家群(特に先進諸国)との対立を
描いていく作品になるのかなと思わせておいて、
実は……という、ちょっと意外な展開をした本作。

作者の過去作である 早川文庫JAの「ハイドゥナン」や
文春文庫の「鯨の王」といった、同じく海洋を舞台にした
SF作品の印象に知らずに縛られていたのかもしれません。

藤崎慎吾の海洋SFで、かつ深海が題材となれば
当然こういうモノになるよねという先入観というか、
そういう、ある種の予定調和のようなものを
外してきたのは、少々新鮮だなと感じました。

本作の場合、著者の過去作品から推測できる、
という意味での予定調和が、別の意味での予定調和、
つまり、人に与えられたオーバーテクノロジーの謎とか
未知の世界の探求とか、そういうものを題材にした
一般にもウケそうなエンターテインメントなSFをやる場合の
非常にベタな方法に置き換わっているだけだ、
と言うこともできてしまうなと、思わないでもありません。

それが悪い、というわけでは、必ずしもありませんけれど。

作品の1つのキーポイントであるシー・ノマッドという設定には
ハヤカワ文庫JAから出ている上田早夕里の「華竜の宮」
続編となる「深紅の碑文」といった作品のことをどうしても
連想させられてしまったのは事実ですが……

本作はあれらとは違いディストピアものというわけでは
ありませんので、その雰囲気は随分と違っています。

帯には様々な人からの賛辞が印刷されていますが、
実際読んでみて、なかなか面白い作品でしたし、
興味を惹かれたという人は、是非、ご一読ください。



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「横浜大戦争」

2018年01月28日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「ご当地小説」というのは、有名な観光名所から
地味な地方都市や農村なども含め色々とありますが、
そんな中の1冊、昨年6月に発売されたのが、
文芸春秋社から出た蜂須賀敬明の 「横浜大戦争」 です。

この手の作品はローカルなネタをこれでもかと
盛り込んだ地域感丸出しなモノになりがちですよね。

となると、横浜市に住み着いて間もない人では無く、
既に最低でも3年以上は継続して住んでいて
その地理だとかそれぞれの区の特性というものにつき
ある程度知っているような人でなければ
楽しめない、そういう人しかターゲットになり得ない、
そんな作品になるということも、ままあるものです。

とはいえ、横浜市は人口が370万人の大都市なので
そこだけを狙った作品を出しても、それはそれで、
一定の売上が期待できるのかもしれませんが……。

とりあえず言えるのは、まるで横浜市に興味が無い
というような人には向かない作品だということですが、
そういう人はそもそもこれを読もうとは思わないだろう、
と突っ込まれてしまえば、それまでですね。

こういうタイプの作品を書こうとする場合には、
それぞれの区の土地神を思い切りカリカチュアライズして、
例えば「青葉区ってこうだよね」「旭区ってこうだよね」
というのをギャグすれすれまで強調するというのも、
パターンとして考えられる王道なやり方です。

実際、この作品でも一部に見られなくもないのですが、
案外と、そこまでローカルにバリバリな内容には
なっていないのではないかというように思えました。

とはいえ、例えば金沢区の土地神が病院を経営する
医者だというのは、そこに横浜市立大学病院がある、
ということを知らないと何でそういう設定になったのかが
分からない可能性が高いということ等はあるのですけれど。

ただ、それが分からないからといって
楽しめないような作品にはなっていません。

逆に、どうせならばもっと多くのローカルネタ、
横浜市民でも知らいするようなディープなネタを
盛り込んでみても良かったのではないか、
というようなことも私としては感じたりしました。

ともあれ、そういうことはありますが、
基本的にはかなり面白く読めて、
なかなか楽しい本だったと思います。



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「未必のマクベス」

2018年01月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

昨年9月末の文庫版刊行以来ずっと
あちこちの書店でプッシュが続いている、
企業謀略小説であり犯罪小説でもある
早瀬耕の 「未必のマクベス」 を読みました。

「未必」という単語を聞いてすぐに思い浮かぶのは
「未必の故意」という言葉ではないかと思いますが、
弁護士ドットコムの用語解説ページによると
同語は「罪を犯す意志たる故意の一態様であり、
犯罪の実現自体は不確実ではあるものの、自ら企図した
犯罪が実現されるかもしれないことを認識しながら、
それを認容している場合を意味する。」と定義されます。

つまり、場合によっては自分の選択した言動が
犯罪となることを知りながら、そうなってしまっても
それはそれで構わないという考えでいることが
「未必の故意」だとすれば、「未必のマクベス」とは
どういう状況を指すことになるのでしょうか。

ちなみに、本作表紙に印刷されている英字タイトルは
「UNCONSCIOUS MACBETH」となっていて、
これを再度日本語に訳すと「無意識化のマクベス」とでも
なると思われるのですが、「自分がマクベスとなってしまう
可能性があることをはっきりと承知していながらも、
それでも構わないと考えている」ということだと思われる
「未必のマクベス」とは、温度差がありますよね。

こういうのは本作を読んだ側が自分なりに感じて
解釈すればいいことではあるのですけれども、
早瀬耕 がどう考えているか、気になります。

なお、改めて言うまでもないかもしれませんが、
本タイトルの「マクベス」とは、ウィリアム・シェイクスピアの
いわゆる四大悲劇の1つである 「マクベス」 のことで、
その詳しい内容はここでは言及しないですけれども、
「未必のマクベス」とはつまり、主人公である中井優一が
マクベス王と同じ道を歩むことになってしまう、
その過程を描く物語だと言えるわけです。

北上次郎は巻末の解説文で本作のことを、
「とても素敵な小説だ。究極の初恋小説だ。」
と評していますが、「究極」であるかどうかは
読者それぞれが判断すればいいとしても、
本作が初恋小説だ、という点については
間違いのないところだと言い切ることができます。

冒頭に私は、本作を企業謀略小説であり犯罪小説
と書きましたけれども、これは、それと同時に
上質な恋愛小説、初恋小説でもある作品です。

「未必の故意」は「未必の恋」でもあるというのは
ネット上で見かけた本作の感想に書かれていた
フレーズなのですけれども、まさしくその通りであり、
かなり刹那的なシーンや暴力的なシーンもありつつも
本作がどこか柔らかい雰囲気を漂わせているのは、
「初恋」が根底に流れているからかもしれません。

非常に面白い作品であり、時間を忘れて読み耽れて、
頁をめくる手が止まらないことを請け負えます。

およそ読者好き、物語好きな人であれば、
読まずに済ませてしまうことがもったいない、
大いなる名作、とんでもない傑作だと断言できます。


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「シンセミア」

2018年01月08日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

年をまたぎつつ一気に読み切ったのが、
阿部和重の「シンセミア」上下巻なのですが、
これは、作者自身の故郷であるという
山形県の東根市神町を舞台にした三部作
「神町トリロジー」の一作目にあたる作品です。

本作の特徴的として、ここに登場してくる人物が
全て、おかしいということが挙げられるでしょう。

例えば、私の買った版の帯に印刷されているのは
「警官は淫行にふけり、青年団は盗撮に励み、
人妻は麻薬を常用し、老人は超常現象にうつつを抜かす。
この街の人間はだれ一人まともではなく、
おのれの欲望を満たすことだけを考えている。」
という文章ですが、これは決して誇張等では無いのです。

そのような人物たちが織り成す物語は下巻に入ると
一気に全てが崩壊に向かって転がり落ちていきました。

因果応報という言葉がありますけれども、
本作に出てくる登場人物達は誰もかれもが
碌でも無い「因」の持ち主ばかりなので、
報われる「果」も碌なものではありません。

あるいは、そこにカタルシスを感じられれば
読後感も少しは爽快になろうものを、本作の場合は、
小悪党が小悪党同士でつぶし合っているというか、
どうしようもないままに自滅をしているとか、そういう、
スカッとしない終わりを迎えるパターンばかりで、
物語的なカタルシスとは言えない終わりを迎えています。

それだけに、読んでいて胸糞が悪くなりそうなのですが、
ここまでどうしようもなく救いの無いラストなわりに、
何だかすんなりと読み終えてしまいました。

それはどうしてだろうと考えてみたのですけれども、
結局、この物語には、極度に乾ききってはいるものの、
全編を通じてユーモアの空気が漂っているからだ、
ということになるのかな、という結論に達しました。

ただし、粗暴で下品なテイストの強いパルプ作品
であるということには変わりはありませんから、
これを笑えるか、かなり読者を選びそうだと思います。

私としても、面白くなかったわけではないのですが、
「神町トリロジー」の残り2作品も読もうと思うか、
と問われると、うーん、ちょっと微妙な気がしますし、
少なくとも、今すぐに手を出そうとは、思えません。





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「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」

2017年12月27日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

千葉北西部、東京で働く人々のベッドタウン地域にある
書店を舞台にした「日常の謎」系統のライトミステリーが、
似鳥鶏の 「レジまでの推理 本屋さんの名探偵」です。

書店が舞台のミステリーということで例をあげるなら
大崎梢が「成風堂書店事件メモ」シリーズや
「出版社営業・井辻智紀の業務日誌」シリーズで
既に何冊も面白いものを発表していますし、
他にも書店ネタの作品は数多くあります。

なので、何もそんな何番煎じか分からないようなことを
わざわざやらずともいいのではないかという気が
少々しないでもなかったのですが、あとがきによると
そもそもは、その大崎梢がテーマを決めた
アンソロジー文庫 「本屋さんのアンソロジー」
に掲載された短編に、主人公を一にする同系統の短編を
3つ合わせて、全4エピソードの形で単行本化したのだそう。

なる程、そういうことであれば、納得できます。

登場するキャラクターがなかなか魅力的なのは
この手のソフトカバーエンタメ小説では大事なことで、
いかにもな感じの設定でちょっとステロタイプですが、
さすが、基本はしっかりと押さえられています。

ボリューム的には、あと2つくらいエピソードがある方が
読みごたえという点で満足度も上がったと思えるので、
そこは残念ですが、まあ、それはそれとしましょう。

ただ、一番長い最終エピソード「本屋さんよ永遠に」は
それまでの3作を踏まえての、いわゆる叙述トリック仕込み
になっているのですが、肝心の仕掛けが一読した段階では
非常に分かりにくいので、疑問というか途惑いというか、
そういったものが脳裏をグルグルと渦巻いてしまって
いかにも収まりが悪かったのは減点対象かもしれません。

改めて頭からパラパラと読み直してみたら
「ああ、これがこうなってこうなのか」と理解できましたし、
呑みこめもしたのですが、もうちょっと上手い見せ方が
あったのではないかなと思わないでもないのです。

わりと面白かったので続編が出れば読みたいところですが、
内容的にこれはこの1冊限りで完結という感じですね。


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「僕の光輝く世界」

2017年12月15日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

探偵役である主人公の設定が特徴的である、
山本弘の「僕の光輝く世界」は、ジャンルとしては
ミステリーに属するなかなか面白い小説でした。

どんな風に特徴的なのかをご理解いただく為に、
裏表紙に印刷されたあらすじを引用してみましょう。

気弱なオタク男子、光輝は進学先の高校でもいじめられ、あげくに橋から突き落とされる。搬送先の病院で絶世の美少女と運命の出会いを遂げた、と思いきや、実は既に失明してしまっていた。美少女は果たして妄想なのか実在なのか……視覚を失った少年が、想像力を駆使して奇妙な謎と格闘する不思議ミステリー


この、「実は既に失明してしまっていた」というのが
どういう意味か分からない、と思われるでしょう。

もう少し詳しく書くならば、主人公の視覚は橋から
落とされたことで確かに機能を喪失しているのですが、
その代わりに 聴覚、嗅覚、触覚等から得られる
情報をもとに脳が欠落を補うことで、まるで実際に
両の目がそれを映し出しているかのような
鮮明な映像が構築されているというのです。

これは「アントン症候群」という特殊な障害で、
そんな都合のいい障害があるのか、とお疑いの人は、
どうぞ、私と同じようにネットで調べてみてください。

「事実は小説より奇なり」という言葉もありますが、
実際、世の中は、まだまだ知らないことだらけですね。

そんなアントン症候群な主人公が解決する事件とは、
どのようなものなのかということは、ミステリーにおいて
ネタバレはタブー中のタブーなので避けますが、
全部で4編のエピソードのどれもが、なかなかの面白さ。

ストレートではない、ちょっとひねった感じのある
キャラ設定ですけれども、ミステリーとしては
案外と素直な作品で、読みやすいですし、
これは普段そこまで本を読まない人でも楽しめる、
なかなかに良い1冊ではなかろうかと思います。

税別で860円と、やや値段が高めの文庫本ですが、
その分、480ページというボリュームを堪能出来るので、
コストパフォーマンスは悪くありませんし、お薦め。


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「卒業のカノン」

2017年12月05日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「卒業のカノン 穂瑞沙羅華の課外活動」は、
機本伸司がデビュー作である「神様のパズル」から
続けてきた「穂瑞沙羅華シリーズ」の最終巻です。

ヒロインの穂瑞沙羅華がシャーロック・ホームズ、
主人公の綿貫基一、愛称「綿さん」がワトソンであるのは
言うまでもなく最初から察せられていたわけですが、
シリーズ完結を記念して後書きで行われた種明かしにて、
他にも色々とホームズ関係を中心にしたネーミングの
お遊びがあることが明らかにされることとなりました。

その中にはこれまでシリーズを読んでいて既に
「これはアレなんだろうな」と思っていたものもあり、
その一方で、なる程これもネタだったかと
ここで初めて気づかされることになったものもあります。

そういうことを知っていようと知っていまいと
作品を読むうえでは特に違いは無いですし、
彩り、オマケ的な要素ではあるのですけれど。

今回のエピソードのキモとなる科学・物理的なガジェットは、
衛星軌道上にソーラー発電衛星を打ち上げて、
そこで発電した電力をレーザー波やマイクロウェーブで
地上に送信するという、宇宙太陽光発電です。

カリフォルニア沿岸と東京湾の2か所に巨大な受電設備を
建設して宇宙太陽光発電を事業として行おうという
アルテミSS社から、沙羅華に対し、彼女を始めとする
遺伝子操作された天才児を生み出してきた元凶である
ゼウレト社CEOシーバス・ラモンの警護要請が来る、
というのが、この最終作のストーリーの出だし。

詳しいことはこれから読む人の楽しみを奪わない為に
ここには書かないようにしておきますけれども、
沙羅華と綿さんのいつものやりとりを堪能できる内容で、
シリーズをここまで追いかけてきた身としては
「まさかこう来るとは思っていなかった」というような
意外性は無いものの、この作品に対して望んでいた、
期待していたものを読ませてもらったという感じです。

そして、シリーズ最終巻ということですので、
ラストにはちょっとしたお楽しみも用意されています。

これでシリーズ完結というのは寂しいですけれども、
シリーズの幕引きにはふさわしい内容でしたし、
今回もしっかりと面白く読ませてもらいました。


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「ビビビ・ビ・バップ」

2017年11月25日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

奥泉光の「ビビビ・ビ・バップ」は、フォギーという
芸名を名乗ってジャズピアニストとして活動している
木戸桐という女性を主人公として綴られた、
全660ページというボリュームを誇るSF作品です。

なるべく軽い紙を使おうとしたのでしょう、
ページ数に比してさほど重くないのですけれども、
見た目のインパクトはかなりのもの。

「これ、人を殺せるんじゃないの」というくらい、
鈍器として色々とつかえそうな見た目の1冊です。

とはいえ、装丁のデザインはキャッチーでポップで
なかなかにハイセンスなものだと思っていたら、
ジャズには詳しくないので気付けなかったのですが、
どうやら、作中でも重要な位置を占めている
バスクラリネット、アルト・サックス、フルート奏者、
エリック・ドルフィーの、亡くなる直前に行われた
ライブの様子を収めたライブアルバム「Last Date」の
ジャケット写真のパロディーになっているようです。

これがどういう作品なのか簡単に説明しようとすると、
つまるところ、人の記憶パターンや人格をコピーして
電脳世界に再現するデジタルツインズという技術、
アンドロイドやAIといったSF的な題材を使って、
ネットを介して国境を越えて繋がる電脳スペースに
社会のかなりを依存している人類を襲う大災害を
描いている作品、と言えば分かりやすいでしょうか。

かなりスケールが大きく、かつ、この物理的な厚さもあり、
これを読むのは大変そうだと感じるかもしれませんが、
そういう心配は、あまりしなくていいでしょう。

本作、実は、かなり読みやすいのです。

その読みやすさの一番の原因が奥泉光の文体で、
とにかく饒舌で、軽快なテイストが持ち味で、
それは彼の他作品でも感じていたことではあるのですが、
今回は特にそれがハマっていると感じました。

また、扱っているテーマの深刻さに対して物語は
基本的にドタバタコメディー的な色味が強くて、
気楽に読めるようになっていることも挙げられます。

ジャズ、落語や将棋など、作者の好みのところで
昭和回顧が爆発しているのも、楽しめました。

それは例えば、大山康晴十五世名人であり、
五代目古今亭志ん生、立川談志、エリック・ドルフィー、
チャーリー・パーカー、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイビス、
忍者の夜叉丸(山田風太郎の『甲賀忍法帖』より)等々、
いかにもな趣味の世界のラインナップですよね。

作者自身が楽しんで書いたんだろうなと思わせられて、
何となく微笑ましい気分にもなったり、ならなかったり。



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「ゴーストケース 心霊科学捜査官」

2017年11月13日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

戦国武将の名をペンネームにした柴田勝家の
霊というものの存在が科学的に証明されている
世界を舞台にしたミステリーを読みました。

本作の主人公は高知生まれの陰陽師であり、
彼が扱うのは幽霊や祟りの案件という設定で、
自殺した地下アイドルの恨みが原因と思われる
ファン等の連続自殺事件の顛末を描く作品です。

本作の題材は秋葉原の戦国メイド喫茶に
通っているという作者の日常を考えれば、
自分に馴染みのある(つまり、知識がある)ところで
勝負してきたということになりますが、
まだまだ新人の作家、しかもどうやら修士論文と
並行して執筆したりもしていたらしい作品であれば、
そういう、自分自身にとっては手堅いところを
攻めてくるのは正しい姿勢だと言えそうです。

さて、肝心要の内容なのですですけれども、
シリーズ化を見据えての事なのでしょうけれど、
ちょっと主張が強めのキャラが多くて、
その所為でとっ散らかっている印象があります。

また、1つ大きく気になったのが主人公の高知弁。

方言を使わせれば簡単にキャラ付けができますが、
ちょっとこれは安易に過ぎないか、ということ、
方言の必然が、ちょっと薄すぎるのがいかにも残念。

もう少し上手くできなかったかな、と思ってしまいます。

とはいえ、娯楽系のキャラクター小説として
まずまず面白かったので、これはこれで
悪くない作品だと言っていいでしょう。


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