三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書
FC2ブログ

「重力アルケミック」

2018年08月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「横浜駅SF」で強烈なデビューを飾った柞刈湯葉が
その2ヶ月後に発表した「重力アルケミック」は、
膨張していく世界が舞台という点において
「横浜駅SF」と通じるところがあるとも言える1作。

横浜駅が自動工事で際限なく拡大を続けて
日本全土を覆いつくさんとするという「横浜駅SF」と、
重力を司り、化学的に転換すれば反重力を得られる
「重素」の過剰採掘で大地の膨張に歯止めがかからず、
東京~大阪間の距離がついに5,000キロを
突破したという世界を舞台にした本作とでは、
設定は異なっているのですけれど、この両作品は
「拡張」というキーワードで括ることもできそうです。

ただし、両作品の共通項と言えるのはそこまで。

その設定の上で繰り広げられる物語はかなり違い、
一種ロードムービー的な作品の「横浜駅SF」に対し
この「重力アルケミック」は特殊な世界設定の上で、
それでも私達の世界のそれと大差なく繰り広げられる
理系大学生の淡々とした大学生活を描くという内容です。

それは森見登美彦の得意とする「腐れ大学生モノ」的な
暴走と脱力を迸る妄想で彩るかのようなものではなくて、
本当に平凡な学生生活が紡がれていると言えます。

一応ヤマとなるイベントはあるのですけれども、
もともとの下地が「淡々とした学生生活」にあるからか、
作品自体の大きなクライマックス感はまるでありません。

「膨張し続ける大地」という大ネタを仕込んでいながら
それに係るエンターテインメント的なカタルシスが一切ない。

そこが本作のいいところだ、というのが、個人的な感想。

愛想の少ないヒロインをどう思うかは人それぞれですが、
私としては、そこもしっかりと楽しく読ませてもらいました。

前作程の破壊力はないものの、なかなかの佳作ですね。



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「グリフォンズ・ガーデン」

2018年08月07日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

今回紹介する早瀬耕の「グリフォンズ・ガーデン」は、
1992年に単行本として刊行された作品が
26年の歳月をまたいで文庫化されたものです。

これは本作でのデビューから22年後に発表された
第2作品「未必のマクベス」の、同じく文庫版が
結構な支持を受け、それを読んだ読者から
出版元に本作の復刊を希望する声が
多数寄せられることとなった結果として、
四半世紀以上を経て文庫になったものです。

何しろもともとが1992年の作品ですから、
磁気テープやフロッピーディスクなど、
登場するガジェットが古いのは、ご愛嬌ですね。

基本、本作は会話劇だということができます。

内容が、観念、理論、哲学などをやり取りする
結構難しめのものになっていますので、
その分野の知識があるから面白がれる、
あるいは多少分からない部分があっても
気にしないで雰囲気を楽しめる人以外には、
ちょっと厳しいところもあるかもしれません。



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「探偵AIのリアル・ディープラーニング」

2018年07月27日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

何となく面白そうだなという予感を覚えたので、
書店で平積み棚で目についた早坂吝の
「探偵AIのリアル・ディープラーニング」を購入。

AI将棋に実際の棋士がなかなか勝てないという
話もあるように、AIの進歩とそれに伴う人間の失業、
シンギュラリティーというようなテーマは、
ここ数年、メディアでも注目されてきているようです。

コンピューター系やビジネス系の雑誌のみならず、
普通の週刊誌等にも記事が載っていますよね。

今回の「探偵AIのリアル・ディープラーニング」は
読み方によってはAI技術に関する知識を
楽しみつつ深められそうな1冊かもしれません。

というのも、本作中のそれぞれの章が、
「フレーム問題」「シンボルブランディング問題」
「不気味の谷」「中国人の部屋」などなど、
AIの進歩やアンドロイドの開発を語る時には
お約束となるキーワードが並んでいるのです。

その内容的にも、それ等の問題が事件に
大きく関係するものとなっています。

これ1冊を最初から最後まで読んでいけば
誰でもこの辺の問題に少し詳しくなれる
という効果が期待できるというわけですね。

ただし、これ等は非常にベーシックな問題で、
あくまで入門編的な知識ではありますが。

ミステリーとしてもそこそこ面白かったですし、
これは作者の他の作品も読んでみなければ
いかないかなと思わされる1冊でした。


カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「盤上の夜」

2018年07月14日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

2014年に文庫化された宮内悠介の「盤上の夜」.。

第33回日本SF大賞の受賞作品であり、
様々な所で様々な人から非常に大きな評価を
これまでに受けてきている作品です。

ですので、それが実際どんなものなのかを
確認するために読んでみたいという興味もありつつ、
結構前に買ったまま長らく放置していたのですが、
そろそろ読んでおかなければならないかなと思って、
この度、そこから掘り出して読んでみたのです。

読む前はもっとハードで堅い作品かと構えていたら
思っていた以上に読みやすい文章でしたし、
収録されている6つの連作短編の全てが刺激的で
かなり面白い作品だと言えるのではないでしょうか。

上記のように日本SF大賞を受賞しただけでなく
直木賞の候補作にもなったというのも納得の内容ですし、
これがデビュー作だというのですから、これは恐ろしい。

収録先は順に、囲碁を題材にした表題作「盤上の夜」、
チェッカー題材の「人間の王」、麻雀題材の「清められた卓」、
将棋やチェスの原型と言われる古代インドのボードゲーム
チャトランガを題材にした「象を飛ばした王子」、
将棋を題材にした「千年の虚空」、と続いたのちに、
第1作の登場人物も再登場して再び囲碁、
それも1945年8月6日に広島で行われたという
本因坊戦を題材にした「原爆の局」というラインナップです。

「千年の虚空」までは、それぞれが独立した短編として
しっかりと楽しめるものになっていて、それでいて、
全体を通すと1つの物語、1つのテーマが
きっちりと繋がっている感じで、それらが最終作品の
「原爆の局」で一気に集約するという構造は、
かなり考えられた非常に上手いものだと思います。

詳しいテーマや内容はこれから本作を読む人のために
ここでのネタバレを避ける為に書かないことにしますが、
最後に改めてもう一度、本当に面白い作品でした。

これは、宮内悠介の他の作品も読まなければなりませんね。


カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「After Bitcoin」

2018年07月02日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

このブログではこれまでにも何度か仮想通貨、
特にビットコインについてのエントリーを
公開してきているわけですけれども、
当初の頃に比べ、今では仮想通貨に対する
私の考え方もかなり変わってきています。

こういうことを書きますと、では一体全体
何がどう変わってきているのか、という
疑問を抱かれることだろうと思います。

ありていに言ってしまえばそれは、その未来像に
疑問符が生じ出しているということになります。

タイムラグがなくて手数料も非常に低くて済む
理想的な国際決済手段という仮想通貨の理想と、
一攫千金の投機対象としか見られていないという
現実とのギャップも、少しでも変わっていくような動きも
全く見られないし、これからもそれは同じなのだろうと
思えることが、そう考えるようになった大きな理由です。

そんな現状を、どうなんだろうなと思いつつずっと
眺めていたのですが、先日、とある知人から
その点に関する良い本を教えてもらいました。

それが、中島真志の「After Bitcoin」です。

なかなか刺激的なタイトルの本ですけれども、
内容的には仮想通貨の基幹技術である
ブロックチェーンに関する技術的な説明と、
仮想通貨の将来性そのものの話があり、
また今後金融の世界でブロックチェーンが
どのように活用されていくのかということが
丁寧に説明されていて大変勉強になります。

ブロックチェーン技術については行政の分野や
医療情報の分野でも有用性が言われていますが、
著者が日銀出身で決済手段を研究しているからか、
本書で採り上げられているのは金融の世界、
法定通貨での決済への活用などについてです。

そういうものが読みたいわけではないんだよね、
という人もいらっしゃることでしょうけれども、
仮想通貨とブロックチェーンの今の現状と
今後の展望を知るには非常にいい本だと思います。

内容に難しいところもあるのは否めませんが、
これで1,600円(税別)はとてもお買い得です。


カテゴリ : 読書
テーマ : 日記 ジャンル : 日記

「アルテミス」

2018年06月22日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

デビュー作「火星の人」が実写映画化されるなど
したことで(映画のタイトルは「オデッセイ」)、
全世界的に話題になったりしたアンディ・ウィアーの、
長編2作品目となるのが「アルテミス」です。

火星を舞台にして1人取り残された宇宙飛行士が
何とか地球に戻ろうとするサバイバルを描いた
「火星の人」(「オデッセイ」)に対し、今回のこちらは
近未来の月面に建設された観光・資源開発都市
「アルテミス」を舞台にした作品となっています。

火星の次は月、というわけですね。

ジャンル的には一応、SF+サスペンスということに
なるのであろう本作の、上下巻の公式の粗筋を
軽く編集した上で、以下に掲載してみましょう。

「人類初の月面都市アルテミス──直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活するこの都市で、合法/非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす女性ジャズ・バシャラは、大物実業家のトロンドから」、企業買収が絡んだ破壊工作の仕事を受ける。「普段の運び屋仕事と違う内容に戸惑うジャズ。だが、彼女は破格の報酬に目がくらみ、仕事を引き受ける。溶接工を父にもち、自らも船外活動の心得があるジャズは、友人の凄腕科学者スヴォボダの助けを借り、ドーム外での死と隣り合わせの作業計画を練っていく。」



本品はジャズの1人称語りで進むのですが、
ここのノリが完璧にアメリカンな感じなのが
最後まで微妙な違和感を感じさせたのが
個人的にちょっと乗り切れなかった部分でした。

一応ジャズは物心ついた頃からアルテミス在住で
親の母国の記憶などは持ってはいないという
設定なのですが、アラブ系の移民なのだから、
小さいころからアラブ系のコミュニティーに
接していたはずなのではないのかな……。

そこに目をつぶれば、前作には少々劣るものの、
概ね、今回もまずまずといえる作品でした。

突出して何か凄いことがあるわけではなく、
またその逆に酷く批判したいこともなくて、
普通に面白いと言えば分かりやすいでしょうか。

上巻の後半ぐらいまでは物語のドライブ感が足りず、
読んでいて今一つページの進みが遅かったけれども、
そこから先はグッとテンションが高まる感じで
わりと一気に最後まで読み切らせてもらいました。




カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「トッカン 徴収ロワイヤル」

2018年06月12日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

税務署勤務の特別徴収官付徴収官を主人公にした
シリーズ4作目となる「トッカン 徴収ロワイヤル」は、
実に6年振りに近いスパンが開いて発売された新作。

今回の帯には「<トッカン>シリーズ初の短篇集!」
との文句が踊っていて、内容的にもそんな感じです。

「税金滞納者に日々納税指導を行なう、国の取り立て屋・国税徴収官は、必要不可欠だけれど、一般には好かれにくい、厳し~い職業である。なかでも、とくに悪質な案件を扱うのが、特別国税徴収官(略してトッカン)だ。情け容赦のない取り立てで「京橋中央署の死に神」と怖れられるトッカン鏡の下、若手徴収官ぐー子が挑むのは、税金とその奥にひそむ人生の難問の数々――飲食店の巧妙に隠された滞納金捜しや、相続税が払えない老婦人の救済と公売ハウツー、税大研修での鬼畜ゼミ発表会や、ブランド品密売人を追っての対馬出張大捕物など……鬼上司・鏡によって磨かれたぐー子の徴収スキルが炸裂するとき、待ち受ける意外なラストとは? バラエティ豊かな徴収官たちの仕事ぶりを、鏡とぐー子がお伝えします。お金の勉強になりつつ、明日への希望が溢れてくる、No.1税金ミステリ『トッカン』シリーズ初の短篇集。全6篇収録。」


というのが公式の粗筋となっているのですが、
6篇のうち2つはかなり短めのものになっているので、
実質的には「全4篇+ショートエピソード×2」
というくらいが正確なのではないかなと思います。

ただし、そのことと、作品の面白さとは別の問題。

個人的に今回は、税務大学校での研修エピソードが、
若手国税職員にとってあるある的なアレコレが
ユーモアをまじえて描かれていて楽しめました。

実態が真実この通りなのかそれとも違うのかは
私は国税職員だったことがないので分かりませんが、
そこはきちんと取材をして書いているのでしょうし、
その上で作者による脚色が加えられているとしても
エンターテインメントである以上、そこそこのアレンジは
あって当たり前とも言えるので、問題はないでしょう。

久し振りの「トッカン」シリーズ新刊となりましたが、
ページを捲りだしてみると、やはりこの作品は面白い。

今回は全体的にぐー子の物語としての色味が
今まで以上に強くて鏡特官の出番が少なかったので、
次回作では鏡無双を存分に楽しませてほしいものです。



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「機巧のイヴ」

2018年06月02日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

昨年秋に本屋の文庫新刊コーナーで見かけ
ちょっと興味を惹かれて購入しておいたのが、
江戸時代後期辺りがモデルと思われる架空世界を
舞台にした時代小説風SFの「機巧のイヴ」。

内容的には、機械人形、オートメイルには
心が宿るのか、ということを描いた作品になります。

SFとしては非常にオーソドックスな題材ですね。

巻末の解説で大森望も書いていますが、
こういう話ならばいわゆるスチームパンクな
世界観にしてきそうなところを本作はあくまで、
江戸時代の風俗や技術に即した描き方を
しているところが大きなポイントとないます。

その中で人と比べて違和感のない動作や表情、
そして会話を繰り広げられる伊武の異質さが
際立ってくることになっていくのですけれども……

作中には、何故そのような時代にそぐわない技術が
そこにあったのかについての言及はありません。

こういう場合の常套として何者かがその技術を与えた、
宇宙からの来訪者か未来からの使者かというような
そういうお約束を踏襲しているネタが隠れているのか、
あるいはそれ以外のことが構想されているのか、
正解は現時点で明らかにされていないのです。

その辺は続編を読んでから判断、でしょうか。



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「滑らかな虹」

2018年05月22日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

以前にかなり面白いとしてここでも紹介した
「ゴースト≠ノイズ(リダクション」に続く
長編2作品目が、十市社 の「滑らかな虹」。

被害者が転校してしまうという厳しい
結果となった「いじめ」事件があった小学校で、
その「いじめ」の中心となっていた生徒の
クラスを担任することになった男性教師が、
再びいじめが起きてしまうことを防ぐという目的で、
クラスの全員に提案した「ニンテイ」ゲーム。

本作は、その「ニンテイゲーム」の顛末を描きます。

そのまま平穏に進行して行くわけがないと、
どこかで破綻して、それをやらなかったよりも
もっと酷いことになっていくのだろうなという
予想も覚悟もできていたのですけれど、
こういう方向で酷くなるとはちょっと想定外でした。

どのように破綻して行くのかはネタバレを防いで
これから本作を読むであろう人の為に伏せますが、
つまるところ、この方向性こそが、作者がこの作品で
やりたかったことなのだろうなと推測できます。

導入のところで「いじめ」がフォーカスされていたので
それがメインになるのかと当初は思っていたのですが、
その答えがどうであったにせよ、色々な意味で
あまり心地の良い題材では無いということは、
一応ここで明確に断言しておきましょう。

気分爽快になる物語、スカッとする勧善懲悪なテイスト、
明るく希望に満ちたラスト、純な登場人物達、
といった要素を学校舞台の作品に求める人には
絶対に合わない作品ですが、面白く読みました。

とはいえ、粗の無い完璧というわけでは無くて、
致命的にも成り得る欠点が本作にはあります。

それが、物語の根幹をなす「ニンテイ」ゲーム。

これがあるからこそ「滑らかな虹」というストーリーが
成立し得ているとうことは確かなのですけれども、
そもそもそこに大きな無理があるというか、
何で5年3組担任である柿崎辰巳は「いじめ」対策として
それを考えたのか、新たなる「いじめ」の抑制に
「ニンテイ」ゲームがどのように有効なのか、
学校や保護者側もその実施を認めているという描写は
一応冒頭にあったもののそこに説得力は薄かったです。

全体的に、「ニンテイ」ゲームの実施関係には
リアリティーが薄すぎで、全く足りておらず、
結局、それが最後まで尾を引いていて、
物語の完成度を落としている様に感じました。


カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「ヒストリア」

2018年05月12日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

昨年8月に発売になった池上永一の「ヒストリア」は、
キャリアが23年になる作者が書いた前作から
数えて4年振りになる13作目の小説作品です。

池上永一といえばごく1部の作品を除いて
自身の出身である沖縄を舞台にした作品を
描き続けてきた作家なわけですけれども、
この「ヒストリア」は装丁に描かれているのが、
いきなりチェ・ゲバラなのが目を惹きます。

しかし本作は彼のを描いたのではありません。

今まで沖縄戦について触れずに来た池上永一が、
満を持して描いた、大戦末期の沖縄と終戦、
駐留している米軍に用地を奪われた人々の
ボリビアへの移民といった題材を扱った物語です。

そこは池上永一作品なので、本作の主人公は
非常にバイタリティーの溢れる女性、知花煉。

沖縄戦における米軍による激しい攻撃で
自身の家族を含む故郷の村全てを失い、
マブイを落とした彼女が辿る激動の人生を
沖縄日本返還の1972年まで描く年代記、
一大絵巻であり、日系3世のイノウエ兄弟、
チェ・ゲバラ等々、魅力的なキャラクターが
登場して波乱万丈の物語を紡いでいきます。

池上永一の小説はとかく(いい意味での)暴走が
付きものなわけですけれど、本作に関しては
そこまで大きな暴走をしたという感はありません。

冷静になって振り返れば、あちこちで暴走をしていた
と気が付くのですけれど、実際に本書のページを
捲っている時にそういう意識がなかったのは、
敢えてそのようにしたのか、そうでないのか……

ともあれ、チェ・ゲバラの没後50年にして
沖縄の本土復帰45年年に発売された本作は
池上永一のこれまでの作家活動の総決算であり、
同時に、これからを占う試金石にもなった
非常に意味の深い作品ではないかと思われます。



カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

事務所のHPはこちらから
プロフィール

管理者:tap

武蔵野市吉祥寺にある税理士事務所、宮内会計事務所に勤める税理士の卵のブログです。
仕事やプライベートを通じて思ったことなどを綴っています。


[ tapのプロフへ ]
税法・会計etc. 過去ログ倉庫

過去に書いてきたエントリの内、税法や会計などに関する話題で特に大事だろうと思うものを抜粋して別途掲載している、部分的ミラーサイトのような別ブログです。

最近投稿した記事

  全タイトルを表示
月別アーカイブ
カレンダー
ブログ内検索
カテゴリ一覧
リンク

響金太郎のラジオブログ
「ジバ☆ラジ」

高校時代からの付き合いで、今は九州博多で演劇の夢を追う友人、響金太郎のブログ。
わざわざ言わなくてもそれくらい分かるよ、と言われるかもしれませんが、芸名です。
どこかで見かけたら、応援してあげてください。


私の尊敬する経営者の一人、㈱AGTの社長が書かれているブログです。
写真もふんだんに使われていますし、見て楽しく、読んで楽しいブログだと思います。
私も、いつかこんなジュエリーを誰かに贈る日が来るのでしょうか……?



国税庁

税務行政に関する企画・立案。国税局・税務署の指導監督省庁です。


国税庁タックスアンサー

各種税金の仕組みや届出書、様式の説明、用語解説や各地の税務相談室の案内を記した国税庁サイト内のコーナーです。キーワード検索もできます。


内閣府

Topページの下部に、政府税制調査会のページへのリンクがあります。そこに掲載されている議事録などから、今後の税制改正の動向を知ることができます。


国税不服審判所

国税に関する法律に基づく処分に係る審査請求について裁決を行い、納税者の正当な権利利益の救済を図る機関です。ネット上で判例集が利用できます。



宮内会計事務所

吉祥寺にある税理士事務所。私の勤務先です。

(別サイト)

上記勤務先の、新規起業者向けの特別サイトです。



最新のトラックバック
RSSリンクの表示
FC2ブックマーク
Ranking
QRコード
QR
管理者
  • 管理画面