「忘られのリメメント」
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
三雲岳斗の「忘られのリメメント」を読みました。
以前に光文社文庫で「少女ノイズ」という作品を
読んだきりでそれ以外はまだ読んでいませんが、
「少女ノイズ」は抜群に面白い作品だったので
これもかなりの期待を持って購入しました。
公式の粗筋は、以下の通り。
擬憶素子、通称「MEM(メム)」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験(リメメント)できるようになった近未来。MEMに記憶を書きこむ"憶え手"である歌手の宵野深菜(しょうのみな)は、リギウス社CEOの迫間影巌(はざまかげよし)から脱法MEMの調査を依頼された。そのMEMには、死亡したとされる稀代の殺人鬼・朝来野唯(あさくのゆい)の模倣犯による犯行の模様が記録されているらしい。かつて朝来野と同じ研究施設で暮らし、朝来野の記憶を移植された深菜は、自らの擬憶に対する朝来野の影響を否定するため、捜査を開始する。だが同時期に深菜の同居人・三崎真白(みさきましろ)が殺されてしまう事件が発生。殺害現場に残されたメッセージを読んだ深菜は、朝来野の死そのものに疑問を抱きはじめる――記憶と擬憶をめぐる、静謐なるSFサスペンス。
他者の記憶をそのまま疑似体験する、
あるいは他者の記憶を自身に移植する。
しかしながら、その中に大量殺人鬼の記憶が
というような物語の流れは、今更珍しくはなくて、
むしろかなりベタなものだと言えそうです。
その基本的なベタさをどのように料理するのか、
どこにどのような自分なりの色を出してきて、
この作品ならではの要素を入れてくるのか、
そこが本作の読みどころだと言えるでしょう。
なお、粗筋に「静謐な」と書かれているそのままに、
本作には派手なアクションや展開はありません。
厳密には、映像化したときにヤマ場になりそうな
派手目のシーンはあるにはあるのですけれども、
その描写はあくまでも「静謐」なものなのです。
賛否はあるでしょうけど、こういうのは好きです。