三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 読書
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「夏の王国で目覚めない」

2019年04月21日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

彩坂美月の「夏の王国で目覚めない」を買ったのは
去年くらいから気になりだした作家だからですが、
本作の文庫が出た昨年8月に買っていながらも、
実際に読むまでに半年以上放置してしまいました。

そんな状態なのに「気になっている作家だ」などと
どの面を下げての事だと言われても仕方ありません。

ちなみに本作は2011年8月に叢書レーベルの
「ハヤカワ・ミステリワールド」から出た第3長編で、
つまりは2009年にプロデビューして2年後という
かなりの初期に書かれた作品ということになります。

これで彩坂作品を読むのは3作品目ですが
青春小説、ジュヴナイル小説的な読み味が
おそらく作風であり、持ち味になるのでしょう。

青春のちょっとしたほろ苦さを味わえるような小説や
少年少女の成長物語というようなジャンルが好きで、
丁寧に描かれているややライトミステリーが
読みたいなと思われるような人であるならば、
この作品とそれ以外の彩坂美月作品も含めて、
肌に合うのではないだろうかと思われます。

本作については、キャラクター設定や物語の展開に
少々強引さがあるのは欠点かもしれないのですが、
今回も面白く読みましたし、こういう作風は好みです。

とりあえず、現時点で未読の作品についても、
少しずつ手を出していこうかなと考えています。



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テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

「ハロ-・ワールド」

2019年04月08日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

現代社会に現実に存在する技術を題材に、
近い将来に実際に起こりそうな問題を描くことを
得意とするのが、藤井太洋という作家です。

今回紹介する「ハロー・ワールド」という作品は、
特段の専門を持たずに「なんでも屋」を自任する
IT系のエンジニアである主人公が友人達と
ネットの広告をブロックするアプリを開発したり、
新型ドローンの営業で訪れたタイのバンコクで
反政府デモに巻き込まれてしまったり、
行政からの干渉や盗聴を阻害する機能を持つ
Twitter の改良版を作ったりする話になります。

冒頭に書いたように本作で描かれるのは
明日にも実際に起きておかしくないことです。

そして、そのような事態から生じるであろう問題や、
描き出される未来像がなかなか刺激的であり、
考えさせられることも多い、面白い作品です。

これまでに読んできた作品もそうでしたけれど、
藤井太洋の書く作品というのは基本に、
情報系のテクノロジーの進歩であったり
人類の未来に対する信頼や希望がありますよね。

その辺りが私が藤井太洋を好きな理由の
最たるものだと言えるのかもかもしれません。

本作もそういう部分はしっかりと描かれていて、
扱われている事件は世界的規模なものであったり、
そこで主人公が置かれることになる境遇は
大変なものだったりするのですけれども、
やはりどこかに世界に対する信頼が感じられ、
読んでいても辛さのようなものはありません。

私のようにもとももと全くの文系人間であって
技術的な点で深い知識は無いような者でも、
ある程度の概略的な知識を持っていれば十分に
作中で何が起きて解決がなされて行っているのか
理解するのは難しくないので、そこはご安心を。

第40回吉川英治文学新人賞を獲得したのも
納得することができる、かなり面白い作品です。



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「麒麟児」

2019年03月27日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

冲方丁の「麒麟児」は、渋川晴海を主人公にして
2012年には映画化もされた「天地明察」 、
水戸光圀を主人公にした「光圀伝」そして
清少納言を主人公にした「はなとゆめ」に続く、
時代小説の4作目となる作品です。

今回の作品で題材となる人物に選ばれたのは、
勝麟太郎(海舟)と西郷吉之助(隆盛)であり、
内容的には、勝海舟の視点から語られる
江戸無血開城交渉に焦点を合わせています。

つまり、これまで発表してきた3作品のように
題材に選んだ人物の人生を辿るということはせず、
その人の遺した業績の1つをクローズアップして、
そこをとことん丁寧に、じっくりと描いていく、
そういうスタンスによって書かれているのです。

公式の粗筋を引用してみましょう。

慶応四年三月。鳥羽・伏見の戦いに勝利した官軍は、徳川慶喜追討令を受け、江戸に迫りつつあった。軍事取扱の勝海舟は、五万の大軍を率いる西郷隆盛との和議交渉に挑むための決死の策を練っていた。江戸の町を業火で包み、焼き尽くす「焦土戦術」を切り札として。和議交渉を実現するため、勝は西郷への手紙を山岡鉄太郎と益満休之助に託す。二人は敵中を突破し西郷に面会し、非戦の条件を持ち帰った。だが徳川方の結論は、降伏条件を「何一つ受け入れない」というものだった。三月十四日、運命の日、死を覚悟して西郷と対峙する勝。命がけの「秘策」は発動するのか――。幕末最大の転換点、「江戸無血開城」。命を賭して成し遂げた二人の“麒麟児”の覚悟と決断を描く、著者渾身の歴史長編。


要するに、江戸へと進軍してくる官軍に対して、
いかにして交渉の糸口を付けるかということ、
そして相手方の要求はいかなるものなのか、
それに対してこちらがどう応じるかが描かれる、
息詰まる駆け引きを描いていく作品なのです。

冲方丁が勝海舟を主人公にした作品を書くと
最初に聞いた時には、勝海舟のイメージといえば
べらんめえ口調で豪放磊落というものなので、
おそらく「光圀伝」のような感じになるのかなと
勝手に予想していたのですけれども、
実際の本作はそういうものとはちょっと違いました。

江戸の無血開城に向けて2人の麒麟児が
自分の属する陣営の思惑を背にして、
相手の思考と政治的背景を探り合いながら
江戸の町を戦火に包むことを避けるべく
落としどころを決死に探り合う様を克明に描く。

そんな本作にはアクション的な意味でいえば
見せ場らしい見せ場は無いのですけれど、
しかしながら両者が醸し出す緊迫した空気感で
最後まで飽きさせず楽しませてくれました。

率直に言って、これはなかなかの傑作です。

読後の余韻もかなり秀逸なものでしたし、
皆さんにお勧めできる1冊と言えるでしょう。



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「天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ」

2019年03月15日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

10年の歳月を費やし書かれたシリーズの最終巻、
小川一水の「天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ」 を
これで終わりとは寂しいなと思いつつも読了。

開始から10年をかけて紡がれてきた全17冊の物語、
差別と排斥と強奪と怨恨と衝突を描いた物語は、
大いなる破壊と崩壊と破滅の後に、確かな希望と、
未来へ大きく開いた窓を描いて完結しました。

控えめに言って傑作。

普通に言うならば大傑作。

遠慮なく率直なところを全て正直に述べるれば
超大々々々々傑作と言っても過言ではありません。

ここまで描いてきた物語をいよいよ畳む段階の
こんな終盤でこんなに大風呂敷を広げだして
大丈夫なんだろうかと心配をしていたのは、
嬉しいことに、全くの杞憂に終わっています。

つまりこの最終巻では、色々なこと、登場人物、
色々な要素が、それぞれしっかりと再梱包されて
1つの綺麗な物語としてきちんと完成しています。

これだけ長期間をかけて巻数を重ねて
描かれてきたシリーズ作品なのですから
拾い切れていない部分はあるものの、
しかし、それを上回る興奮、上回る充足、
上回る読後の余韻を残してくれるのですから、
徒にそれを指摘していくのも無為なことでしょう。

古くからのファンとして、作者である小川一水さんには
「お疲れさまでした」そして「ありがとうございました」と
強いお礼の言葉を、この場で述べたいと思います。





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「天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと」

2019年03月02日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

いよいよ完結したので、第9話以降を封印していた
小川一水の「天冥の標」シリーズを積読の山から
満を持して取り出して読み始めています。

今回はとりあえず、第9話の紹介なのですが……

セレス地表で世界の真実を知ったカドムら一行は、再会したアクリラとともにメニー・メニー・シープへの帰還を果たした。そこでは新政府大統領のエランカが、《救世群》との死闘を繰り広げつつ議会を解散、新たな統治の道を探ろうとしていた。いっぽうカドムらと別れ、《救世群》のハニカムで宥和の道を探るイサリにも意外な出会いが――。あまりに儚い方舟のなか、数多のヒトたちの運命が交錯する、シリーズ第9巻完結篇。


というのが第9話後編であるPART2の粗筋であり、
率直に言って、興奮する以外に何もできないような
テンションがマックスまで上がる物語となっています。

「天明の標」というシリーズは、短いエントリーの文章で
その魅力が語れるような簡単な物語ではありません。

ここに至るまでに積み重ねられた8話13冊の物語が
しっかりとじっくりと込めてきた圧倒的な物量と熱量が、
物語の終着点を目指してどんどん収斂していく、
怒涛のように伏線が回収されていく様を描きつつ、
そこに更なる要素が上積みされていく第9話。

その流れに、読者たるこちらとしては、
ただただ息をのむしかありません。

しかも、風呂敷が畳まれ始めているからといって
物語のダイナミクスがそれで失われてしまって
小振りなものにまとまってしまうというのではなくて、
あくまで展開は熱く、かつ、こちらの想像以上の
大きなスケールへと広がっていくのです。

これは、残り1話できちんと完結するのでしょうか……。

実際に最終巻まで刊行されていることを考えれば、
そこは心配せずとも絶対に綺麗な大団円を
見せてくれるものと信じていますけれども、
これが果たしてどういうラストを迎えるものなのか、
第9話を読み終えた時点では予想ができません。

「予想したくない」というのが正確かもしれませんが。

つまり、何も考えずに(想像せずに)白紙の状態で
実際の物語を読んで、そこから必ず生じるであろう
感動の奔流に包まれたいと思ってしまうわけです。




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「忘られのリメメント」

2019年02月18日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

三雲岳斗の「忘られのリメメント」を読みました。

以前に光文社文庫で「少女ノイズ」という作品を
読んだきりでそれ以外はまだ読んでいませんが、
「少女ノイズ」は抜群に面白い作品だったので
これもかなりの期待を持って購入しました。

公式の粗筋は、以下の通り。

擬憶素子、通称「MEM(メム)」を額に張るだけで、他者の記憶を擬憶体験(リメメント)できるようになった近未来。MEMに記憶を書きこむ"憶え手"である歌手の宵野深菜(しょうのみな)は、リギウス社CEOの迫間影巌(はざまかげよし)から脱法MEMの調査を依頼された。そのMEMには、死亡したとされる稀代の殺人鬼・朝来野唯(あさくのゆい)の模倣犯による犯行の模様が記録されているらしい。かつて朝来野と同じ研究施設で暮らし、朝来野の記憶を移植された深菜は、自らの擬憶に対する朝来野の影響を否定するため、捜査を開始する。だが同時期に深菜の同居人・三崎真白(みさきましろ)が殺されてしまう事件が発生。殺害現場に残されたメッセージを読んだ深菜は、朝来野の死そのものに疑問を抱きはじめる――記憶と擬憶をめぐる、静謐なるSFサスペンス。


他者の記憶をそのまま疑似体験する、
あるいは他者の記憶を自身に移植する。

しかしながら、その中に大量殺人鬼の記憶が
というような物語の流れは、今更珍しくはなくて、
むしろかなりベタなものだと言えそうです。

その基本的なベタさをどのように料理するのか、
どこにどのような自分なりの色を出してきて、
この作品ならではの要素を入れてくるのか、
そこが本作の読みどころだと言えるでしょう。

なお、粗筋に「静謐な」と書かれているそのままに、
本作には派手なアクションや展開はありません。

厳密には、映像化したときにヤマ場になりそうな
派手目のシーンはあるにはあるのですけれども、
その描写はあくまでも「静謐」なものなのです。

賛否はあるでしょうけど、こういうのは好きです。



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「未来職安」

2019年02月05日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「横浜駅SF」「重力アルケミック」の柞刈湯葉の
4作目にして初の連載作品だった「未来職安」は、
生産活動のほとんどが機械や人工知能に
代行されている未来社会を舞台にした作品。

公式の粗筋をちょっと引用してみましょう。

99%の“消費者”と1%の“生産者”。平成よりちょっと先の世界。完全自動運転、ネコッポイド、警察ロボ、配達渡し鳥…いろんなことがオートの近未来、国民には厚生福祉省から生活基本金が支給されている。労働の必要はないけれど、職安の需要は、まだまだ健在。ヤクザみたいな風貌の職安経営者・大塚さん、女性事務員・目黒のもとに、仕事を求めて今日も妙なお客さんが現れる―。常識をくつがえす近未来お仕事小説。


もしかしたら今までの彼の作品の中では
一番飄々とした読み心地かもしれない本作。

しかしながら、今回もジャンルはSFですし、
柞刈湯葉という作家のアイデンティティーは、
やはりSF小説というところにあるのでしょう。

クライマックスらしいクライマックスもなく、
最後まで事件らしい事件も起きず、
ずっと同じテンションで続く260ページあまりは、
メリハリのない作品だということも可能であり、
そこが気に入らないという人も出てきそうです。

ですが、これはこの、のんべんだらりとした感じを
楽しむ手合いの作品だと言うべきであり、
そこに文句を言うのは詮無いことでありましょう。

この「未来職安」で描かれている世界観は
未来社会の設定としては少しばかり面白い
感じになっているなと感じられましたので、
私は、そういうところを楽しんで読んでいました。

細かいところに突っ込みを入れようと思えば、
例えばあらゆる生産活動が自動化されたといえ、
具体的にどのようにそれが達成されたのかは
一切書かれていないので、アレはどうなった、
ソレはどうやって解決したんだ、というように、
色々と疑問も多く残ったりするところがあります。

それは人によっては大きな駄目出し要素と
なるところですが、欠点とは感じませんでした。

それが、本作の魅力の1つかもしれません。



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「ある日、爆弾が落ちてきて」

2019年01月24日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

以前からちょっとした興味を抱いてはいたものの
何しろ2005年に発売されたという古い作品なので
店頭には既に無いから買うことができなかった本。

そんな「ある日、爆弾が落ちてきて」が書下ろしを加えて
再版されることとなったのが、一昨年の4月のことでした。

何しろずっと関心を持っていた作品なわけですから、
書店で見かけた瞬間、レジに持って行って購入したのに、
買っただけで何だか満足してしまってすぐには
読み始めることが無かったのは、私にはよくあること。

それを重い腰を上げてようやく読んでみた本作は、
書き下し新作を含め全部で8編の短編からなる短編集。

それぞれの物語相互の繋がりは特に無いけれど、
「時間」を絡めたSFというジャンルであるということ、
「フツーの男の子」と「すこしフシギな女の子」の
「ボーイ・ミーツ・ガール」を描くものでであること、
少年と少女、お互いの属する時間軸のズレが
ミソであること等が共通点としてあります。

つまり、連作短編集ということです。

作品としてのレベルはそれぞれですが、
「これは駄目だな」というのは無い一方で、
「おっ、これは良いんじゃないか」というのは
複数ありましたから、結構クオリティーの高い
満足度のある1冊なのではないかと思います。

なる程これならば、あちこちで評判が良かったり、
表題作が「世にも奇妙な物語」で実写ドラマに
なったというのも、大いにアリだなと理解できます。

時間SFと、初々しさもあるボーイ・ミーツ・ガールは
非常に相性のいい要素だと思いますし、
SF好き、特にこういうものに手を出す層は、
私も含め、案外とロマンティストが多いですからね。



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「熱帯」

2019年01月11日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

今月16日に結果が発表される予定の
第160回直木賞の候補作にエントリーされた
作品である森見登美彦の「熱帯」を読みました。

腰巻の帯に書かれていた粗筋は、次の通り。

沈黙読書会で見かけた『熱帯』は、なんとも奇妙な本だった!謎の解明に勤しむ「学団」に、神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと、「部屋の中の部屋」……。東京の片隅で始まった冒険は京都を駆け抜け、満州の夜を潜り、数多の語り手の魂を乗り継いで、いざ謎の源流へ―!


森見登美彦が一時期、深刻なスランプに
陥っていたというのは有名な話です。

本作も、全5章のうち3章までを書き上げて後
執筆作業が暗礁に乗り上げたことで知られ、
実際、こうして書き上げられたものを読んでみると、
第3章までと第4章以降で作品の雰囲気が
大きく変化しているということに気が付きます。

物語的にも大きな転換点となる箇所ですし、
その前後で作品のノリが変わるのは
内容からも大いにあることなのですけれど、
この辺り、邪推しようと思えばいくらでも
妄想が湧き上がってくる感じです。

作品としてはちょっと怪談めいたところもあり、
一方でユーモア小説的なところもあって、
作者である森見登美彦が認めているように
怪作であると言っていいのではないでしょうか。

これでもかと入れ子構造を使ってきているのは
「千一夜物語」へのオマージュでもあるからで、
読み手の側がこういうのに慣れていないと、
何が何やらわけがよく分からないということに
なってしまうかもしれないとも思います。

森見登美彦も、そこで「今の語り手が誰なのか」
ということが明確化される書き方はしていませんし、
意図的に読者を迷宮に引き込もうとしています。

本作の完成度が高いかどうかはともかくとして、
意欲作・労作であることは疑いのないところです。

直木賞を獲れるかどうかは分かりませんが、
作者が苦労して書いたのだろうという痕跡も含め、
とても面白く読ませてもらたったという感じです。



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「怪奇探偵リジー&クリスタル」

2018年12月29日  
JR中央線三鷹駅、吉祥寺の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

山本弘の「怪奇探偵リジー&クリスタル」は
第二次大戦直前のロサンゼルスを舞台にした、
パルプマガジンテイストの探偵小説です。

主人公である女性私立探偵のリジー・コルトと
助手のクリスタル・ナイトの2人のキャラクター設定も
なかなか個性的で、パルプSFや怪奇映画や
初期の特撮映画、古典SFの大家達への
愛やリスペクトがふんだんに盛り込まれています。

つまり、山本弘の趣味の世界をてんこ盛りにした、
いわゆる「おもちゃ箱をひっくり返した様な」作品です。

B級の匂いがプンプンとしてきますよね。

実際読んでみると、もう、これは作者自身が
かなり楽しんで書いたんだろうなというのが
作品のいたるところ、端々から滲み出てきていて
そういう意味では、微笑ましくさえありました。

それでも単なる内輪ウケや薀蓄披露に終わらず、
しっかりとしたエンターテインメント作品として
仕上げているのは、さすがというところでしょう。

収録されている全5エピソードのそれぞれで
B級の雰囲気をみごとに描き出しつつ、
娯楽作品として面白く、時に切なさも潜ませて、
これは、かなりの傑作ではないでしょうか。

山本弘は、こういうのも上手いですね。



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