三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 消費税の仕組み(その5)

消費税の仕組み(その5)

2010年09月14日  
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

「消費税の仕組み」最終回の今回は、
いわゆる「免税点」制度について説明したいと思います。

(その1)から(その4)までは、
モデル図を使って消費税の担税者と納税者の話をしてきましたが、
実際に消費税法の条文上ではどうなっているのかというと、
「国内において」
「事業者が事業として」
「対価を得て」
「資産の譲渡等を行なった」
場合には、消費税の納税義務があるという規定になっています。

細かい言葉の定義はここでは割愛しますが、基本的には、
日本国内で物品の販売またはサービスの有償提供を行なっていれば
消費税の納税をしなければならないということだと
考えていただいて差し支えありません。

ただし小規模な事業しか行なっていないような者にとっては、
消費税の会計処理その他の負担が増えてしまう等の理由から、
消費税の導入時から、一定額以下の売上しかない場合には
(ちなみに平成16年の法改正でこの金額が減額されています)
消費税の納税義務が免除される
「免税事業者」となるように決められていました。

この基準となる売上高のことを「事業者免税点」と言い、
現在の規定で、具体的には税抜で1,000万円の課税売上高が
課税事業者と免税事業者を区分するラインとなっています。

しかし考えてみてください。

その課税期間において消費税を考慮した
会計処理を行なうかどうかは、
オンタイムの処理をしようとすれば当然、
その課税期間開始時に決まっていなければなりませんが、
例えばその年の1月1日の時点において、
12月31日までの累計売上高が1,000万円を超えるか否かが
はっきり分かるものなのでしょうか。

中には契約によって月の売上高が定額で決められている等の理由で
今年の売上は〇〇円だよ、
と断言できる事業者もおられるとは思いますが、
それはごく一部の僅かな例外。

大抵の事業者にとってその年の売上は、
その年が終わってみなければ分からないものでしょう。

それでもその年の初めには
消費税を考慮した会計処理をするのか、しないのか、
それを決めなければいけない。

そこで、(図9)です。

消費税の仕組み(図9)
   (図9)

当期における消費税納税義務の有無を判定するのに
当期の売上が使えないのであれば、
直近の課税期間の数字を使えばいい。

しかし、当期に一番近い前期の課税売上高については、
残念ながら、当期の開始時点においては未だ確定しておりません。

実際にお仕事をされている人ならばご理解いただけるでしょうが、
請求書等の書類が揃って売上や仕入れが最終的に確定されるまで、
事業者によって差はあれど、おおよそ1ヶ月弱はかかるものです。

税法上も、消費税の確定申告書の提出期限は、
法人の場合はその課税期間終了の日の翌日から2ヶ月以内、
個人の場合は3ヶ月以内と定められていて、
つまり、当期がだめなら前期の数字を使いたいと思っても、
課税売上高の正式な最終集計は当期首にはまだ分かっていないのです。

そこで次善の策として採用されているのが、
当期開始時点で、その期間の課税売上高が確定している
一番直近の課税期間である、前々期の数字です。
これを、「基準期間の課税売上高」と言います。

厳密には、課税期間が1年未満の場合などには
色々とやり方が異なったりもするのですが、
ひとまずは、当期における消費税納税義務の有無は
前々期の課税売上高が1,000万円超か否かで判定する、
と覚えていただいて結構です。

つまり、極端な話、
前々期の課税売上高が例えば1億円あれば、
今年の課税売上高が最終的に1,000円だったとしても、
その事業者は消費税を計算し申告し、
納付をしなければなりません。

こういう話をした時に多い誤解が、
では、今期は1億円の売上があった前々期に対応する消費税額を
納めなければいけないということなのか、というもの。

「基準期間の課税売上高」はあくまで
当期の納税義務の有る無しを判断する為に用いる数字であって、
実際に幾らの消費税を納める必要があるのかの計算は、
当期に発生した課税売上高(と課税仕入高)を使って算出します。

(図10)をご覧下さい。

消費税の仕組み(図10)
   (図10)

先に書いた1,000円という例はさすがに極端に過ぎるので
ここでは当期の課税売上高を1,000万円にしています。

基準期間の課税売上高、即ち前々期の課税売上高は1億円。
1,000万円を超えているので、
当期は消費税の納税義務があることになります。

この場合の当期に納めるべき消費税額が
1億円×5%=500万円、あるいは、
5,000万円×5%=250万円 になるのではないか、
というのが、先に触れた「誤解」です。

しかし前述の通り、
当期の消費税は当期の数字を使って計算しますから、
正しくは図にも書いた通り、
預かった消費税 1,000万円×5%=50万円 から
支払った消費税 500万円×5%=25万円 を差し引いて
50万円-25万円=25万円 というのが正解です。

なお、仕入の中には消費税が課せられた課税仕入の他に、
消費税の課税対象外である非課税仕入れが入っているので、
当期利益400万円の5%相当額20万円には
ならないことは、ご注意ください。

ちなみにこの期の課税売上高は1,000万円ちょうどですので、
当期を基準期間とする翌々期は消費税の免税事業者となります。
参考までに。

    (2011年12月8日 追記)
    消費税の納税義務判定については、
    平成23年の税制改正で新たに、
    直前事業年度開始から6ヵ月間の
    売上等を用いる方法が設けられました。
    詳しくは、以下のエントリをお読みください。

    2011年11月30日
    「消費税の仕組み (平成23年改正 その1)」
    2011年12月 8日
    「消費税の仕組み (平成23年改正 その2)」



さて、以上を持ちまして、
5回にわたって書いてきた今回の「消費税の仕組み」は終了です。

消費税についてはまだまだ言い足りないこともありますので、
今後も機会を見て、ちょこちょこと書いていくかもしれませんが、
とりあえず、これにて、一端の区切りとさせていただきます。

長々と書いてきた内容が、
消費税というものに対する皆様のご理解を深めるのに
幾らか役に立てたのであればいいなと思いつつ、
今回は、これにて。


(その4)を読む< >(その1)から読み直す

カテゴリ : 税金・税法
テーマ : 税金 ジャンル : 政治・経済

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