「トランスヒューマンガンマ線バースト童話集」
宮内会計事務所に勤める所属税理士です。
あちこちで絶賛の感想を目にした三方行成の
『トランスヒューマンガンマ線バースト童話集』を、
かなり遅まきながら読むこととなりました。
はるか未来、あるところにシンデレラというトランスヒューマン(超人類)の少女がおりました。<魔女>から拡張現実ドレスを与えられた彼女は、カボチャ型の飛行体に乗ってお城の舞踏会に参加します。でもその夜、空から宇宙最強の爆発・ガンマ線バ-ストが降りそそぎ――「シンデレラ」「竹取物語」「白雪姫」などの名作童話と本格SFのガジェットが賑やかに融合した笑って泣ける短編集。第6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作
というのが裏表紙に印刷された公式の粗筋。
6編の童話をトランスヒューマン(超人類)と
ガンマ線バーストという2つを軸にして
SFで味付けたという趣向の本作に収録された
短編のタイトルは順に「地球灰かぶり姫」、
「竹取戦記」、「スノーホワイト/ホワイトアウト」、
「<サルベージャ> VS 甲殻機動隊」、
「モンティー・ホールころりん」、そして最後に
「アリとキリギリス」というものになっています。
元ネタとなっている童話が何なのかというのは
説明しなくとも分かってもらえるでしょう。
本作の特徴として、作品の端々に小ネタというか、
アニメや漫画のパロディー要素を盛り込んでいる
ということが挙げらるとしばしば言われています。
使われているSF要素はかなりハードSF寄りですが
その為、読んでいてそんなにハードさは感じません。
それをどう捉えるかは読み手の好みの問題であって
一概に良いとか悪いとか言えないなと思うのですが、
「判っている」読者に向けて書かれている印象は
確かに存在していて、広く一般読者に向けての
発信を目指した作品とは言えないのかもしれません。
おそらく本作は、作者が自分の趣味のままに
好きに書いた作品群というところに軸足が
あるのではないかと考えることもできそうです。
一方で悪ノリの暴走状態で収拾がつかなくなる
一歩手前で制御している感があるのは、
最終話の「アリとキリギリス」がこれ等の短編群を
上手くピュアな物語へと落着させることに
成功しているからなだろうなとも思います。
これがあると無いとでは、読了後の感覚が
全く異なると思える、良い連作短編でした。