「四畳半王国見聞録」
2011年03月30日
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
「日常回帰」テーマの一貫としての、
読了本紹介、その2回目です。
以前に「ペンギン・ハイウェイ」を紹介した
森見登美彦が1月末に発売した作品、
その名も「四畳半王国見聞録」を、読みました。
「ペンギン・ハイウェイ」で新境地を開いたはずが、
その次に出版されたのが今まで幾つかの作品で描いてきた
京都を舞台とした「くされ大学生モノ」という、
ある意味定番商品であるという、
この、すかされっぷりも含めて、
ああ、森見登美彦だなぁ、という感じです。
しかも、タイトルが「四畳半王国見聞録」!
これはもう、嫌が応にも、
大傑作であった「四畳半神話大系」のことを
思いださずにはおれないではありませんか!
現代日本の小説・マンガ界における
「四畳半」のオーソリティーと言えば何といっても
「男おいどん」や「元祖大四畳半大物語」などの作品を描いた
松本零士であることは疑いの余地のないところではありますが、
四畳半モノの書き手として森見登美彦も
その域を目指そうとでもいうのでしょうか。
作者自身が運営しているブログ、
この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
における発売を告知する文章での言及によると、
本作は彼が今まで書いてきた 「四畳半的短編七篇を集め」、
それが 「複雑怪奇なかたちで相互に結びつくことで、
聖なる阿呆神の統べたもう四畳半的宇宙が、
強いて見せるほどでもないその全貌をあらわす」
「男汁で煮染めた四畳半内部で繰り広げられる
禁欲的かつ浪漫的冒険の記録」 なのだそうです。
(以上「 」内、当ブログ管理者による引用)
なお、本作の内容をしっかりと楽しむ為には、
登場人物の重複ほか、
細かいところでリンクしている過去の作品として、
「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「新釈 走れメロス」
の3つは事前に読んでおいた方がいいかもしれません。
シリーズものと謳っているわけでもないのに
予習が必要となる作品というのも、
それってどうなんだろうという気が
ちょっとばかりしないでもありませんが、
そんなわけですので、
この作品は森見登美彦初心者向けというより
むしろ上級者向けだと言えるでしょう。
時に幻惑的に時に哲学的に
時に誇大妄想的に時に視野狭窄に
時に無意味に時に桃色に
そして基本はやはり阿保らしく、
7つの短編が絡み合いもつれ合って
織り成される混沌と妄想の一大伽藍、曼荼羅絵図。
前作の「ペンギン・ハイウェイ」については
スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」
と比較するレビューを幾つか読みましたし、
森見登美彦本人も「ソラリス」を意識したと発言していました。
その伝でいくと、本作は何と対比できるのでしょう。
別に無理に対比する必要は無いじゃないかと言われれば
その通りで反論はできないのですけれども、
「見渡すかぎり阿保ばっかり」(「蝸牛の角」より)な本作の、
実はかなり真剣にSFしているところなんかを読むと、
そんなことをふと考えてしまう、そんな読後となりました。
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。
「日常回帰」テーマの一貫としての、
読了本紹介、その2回目です。
以前に「ペンギン・ハイウェイ」を紹介した
森見登美彦が1月末に発売した作品、
その名も「四畳半王国見聞録」を、読みました。
![]() | 四畳半王国見聞録 (2011/01/28) 森見登美彦 商品詳細を見る |
「ペンギン・ハイウェイ」で新境地を開いたはずが、
その次に出版されたのが今まで幾つかの作品で描いてきた
京都を舞台とした「くされ大学生モノ」という、
ある意味定番商品であるという、
この、すかされっぷりも含めて、
ああ、森見登美彦だなぁ、という感じです。
しかも、タイトルが「四畳半王国見聞録」!
これはもう、嫌が応にも、
大傑作であった「四畳半神話大系」のことを
思いださずにはおれないではありませんか!
![]() | 四畳半神話大系 (角川文庫) (2008/03/25) 森見 登美彦 商品詳細を見る |
現代日本の小説・マンガ界における
「四畳半」のオーソリティーと言えば何といっても
「男おいどん」や「元祖大四畳半大物語」などの作品を描いた
松本零士であることは疑いの余地のないところではありますが、
四畳半モノの書き手として森見登美彦も
その域を目指そうとでもいうのでしょうか。
作者自身が運営しているブログ、
この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ
における発売を告知する文章での言及によると、
本作は彼が今まで書いてきた 「四畳半的短編七篇を集め」、
それが 「複雑怪奇なかたちで相互に結びつくことで、
聖なる阿呆神の統べたもう四畳半的宇宙が、
強いて見せるほどでもないその全貌をあらわす」
「男汁で煮染めた四畳半内部で繰り広げられる
禁欲的かつ浪漫的冒険の記録」 なのだそうです。
(以上「 」内、当ブログ管理者による引用)
なお、本作の内容をしっかりと楽しむ為には、
登場人物の重複ほか、
細かいところでリンクしている過去の作品として、
「四畳半神話大系」「夜は短し歩けよ乙女」「新釈 走れメロス」
の3つは事前に読んでおいた方がいいかもしれません。
シリーズものと謳っているわけでもないのに
予習が必要となる作品というのも、
それってどうなんだろうという気が
ちょっとばかりしないでもありませんが、
そんなわけですので、
この作品は森見登美彦初心者向けというより
むしろ上級者向けだと言えるでしょう。
時に幻惑的に時に哲学的に
時に誇大妄想的に時に視野狭窄に
時に無意味に時に桃色に
そして基本はやはり阿保らしく、
7つの短編が絡み合いもつれ合って
織り成される混沌と妄想の一大伽藍、曼荼羅絵図。
前作の「ペンギン・ハイウェイ」については
スタニスワフ・レムの「ソラリスの陽のもとに」
と比較するレビューを幾つか読みましたし、
森見登美彦本人も「ソラリス」を意識したと発言していました。
その伝でいくと、本作は何と対比できるのでしょう。
別に無理に対比する必要は無いじゃないかと言われれば
その通りで反論はできないのですけれども、
「見渡すかぎり阿保ばっかり」(「蝸牛の角」より)な本作の、
実はかなり真剣にSFしているところなんかを読むと、
そんなことをふと考えてしまう、そんな読後となりました。