三鷹駅南口 (武蔵野市、吉祥寺)、とある税理士事務所職員の日常 「新世界より」

「新世界より」

2011年04月03日  
吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

2008年の日本SF大賞受賞作、
今からはるか未来の日本を舞台にした
いわゆるディストピア小説である、
貴志祐介の「新世界より」を読みました。

あれやこれやの事前情報から、
ある程度こんな感じの内容なんだろうなという
漠然とした推測を抱きつつ読み始めてみたのですが、
のっけからその予想と違っている
SFファンタジー系児童文学のような出だしだったので、
正直、ふいを打たれたような感じで、
ちょっとびっくりさせられました。

新世界より(上)(講談社文庫)新世界より(上)
(講談社文庫)

(2011/01/14)
貴志 祐介
商品詳細を見る
新世界より(中) (講談社文庫) 新世界より(下) (講談社文庫)

正直、もっとガチガチのハードSF路線だったり、
結構ミリタリーっぽかったり、
またはハードボイルドぽかったり、
とことんダークだったり、
さもなくば作者が作者だけに
重苦しいホラーで来るかと、
私としては身構えていたわけです。

しかし、実際に序盤で描かれるのは、
語り手である主人公による幸福な子供時代の回想であり、
気の置けない幼馴染達との想い出の日々だったので、
思いっきり拍子抜けしたというか、
派手に肩透かしを喰らった気にすらなったという次第。

しかしそこで安心してしまうと、
作者の仕掛けた罠に
まんまとはまってしまうことになります。

細かい内容は書きませんけれども、
大体上巻の半ばくらいから物語は
児童文学的な空気感を脱ぎ捨て、
次第にその秘められた牙を
剥き出しにするようになってきます。

そうして中巻に入る頃には、
序盤からでは予想できないような
緊迫感を漂わせるようになってきて、
更に下巻まで至ると……。

なる程、導入部をああいったテイストにしているからこそ、
状況が大きく転がりだしてからのこの展開が
強烈なギャップとして効果的に生きてくるというわけですね。

本作のマイナス部分を挙げてみるならば、
一部に顕著なご都合主義展開だったり、
もうちょっとここは構成的にも何とかならなかったものなのかな、
と感じられる部分が無いではないところ等があるでしょう。

それでも、勢いのあるストーリーテリングが行なわれていれば、
多少の粗なんてものは欠点らしい欠点にはならないもので、
本作はその良い例かもしれません。

ディストピアものというジャンルに対して
思いきったコペルニクス的で斬新な大転換をもたらしていたり、
今まで誰も行なっていなかったような切り口を使っていたり
といったようなことをしているわけではないので、
その点では古典的といえば古典的、
ステレオタイプな設定といえばこれ以上ないくらいそうであるような、
そんな作品だと、本作は言えるのでしょう。

しかしながらここに描かれる未来世界のイメージが、
ビジュアル的にかなり強烈で
グロテスクかつ刺激的でもあることもあって、
類型的であるせいで面白みもあまり感じられない
ということには、決して、なっていません。

ラストのオチ……というか、
話の落ち着けどころが、また良かったです。

本作の場合は、それと分かるような感じで
しっかりと伏線が張られていたのもあったから、
これはこういうことになるんだろうなと、
いざクライマックスになる前に
かなり確度の高い予測をすることが充分に可能でした。

ですから、意外性や驚きはそこまで無かったものの、
こういう展開に話のエンディングを持っていったというところに、
作者のスタンスが出ているのだろうなと感じられ、
個人的には非常に興味深かったです。


余談ですが、私の通勤コースにある某書店では、
平積みにされている本作文庫版の宣伝ポップに、
「読了後に胸の奥から希望が湧いてくる」
というような旨のコメントが付されていました。

希望……?
希望ね、うーむ。

そう評されることには、どうしても違和感を禁じえません。

もちろん本の読み方は千差万別、人それぞれなので、
同じ作品を読んだとしても、
そこから感じるものは読者によって全て異なっていて当たり前です。

なるほどねぇ、希望、か。

本作のラストに希望を感じるかどうかはともかく
これが非常に面白い作品であるということは、
まず、疑いのないところです。


ちなみに、せっかく(?)なのだからということで、
本作タイトルの由来になっている
ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の
私が所有しているCD3枚を連続して聴きながら、
このエントリは入力しています。

一応、それぞれ、以下にリンクを掲載しておきます。

父がLPを持っていたことにより
小さい頃から聴き慣れている演奏だから、
という理由から、私の個人的お気に入りは、
トスカニーニ指揮のNBC交響楽団。

ボヘミアの土着臭が無い、
という批判も良く聞くトスカニーニの「新世界より」ですが、
「三つ子の魂百まで」というわけで、
やはり彼の指揮が(特に第3楽章)
私には一番しっくりきます。



「ライン」&「新世界より」他「ライン」&「新世界より」他
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮
NBC交響楽団
ドヴォルザーク:交響曲第9番ドヴォルザーク:交響曲第9番
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ドヴォルザーク:交響曲全集ドヴォルザーク:交響曲全集
ヴァーツラフ・ノイマン指揮
チェコ・フィルハーモニー交響楽団

カテゴリ : 読書
テーマ : 読んだ本の感想等 ジャンル : 小説・文学

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