武蔵野市(三鷹市)吉祥寺、とある税理士事務所職員の日常 消費税の仕組み(その9)

消費税の仕組み(その9)

2012年03月21日  
国税庁ホームページ吉祥寺(武蔵野市、三鷹市)の税理士事務所、
宮内会計事務所に勤める税理士の卵です。

納付すべき税額の計算上、
売上によって受け取った消費税から
控除することができる
仕入に係る消費税の計算方法につき、
実際に支払った税額を基に算出する
「本則課税」について、(その7)および(その8)
2回に分けて説明してきました。

確定申告業務の最終局面だったこともあって、
前回からちょっと期間が開いてしまいましたが、
今回は、仕入税額控除のもう1つの方法
「簡易課税制度」について書かせていただきます。


この「簡易課税制度」は、正式には、
「中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例」といい、
その名の通り、規模の小さな中小事業者に対し、
事務負担の軽減化などの観点から
仕入税額控除の計算を簡便化する制度になります。

「基準期間の課税売上高が5,000万円以下であること」
というのが、この規定の適用を受ける為の要件。

「基準期間の課税売上高」がどういう概念なのかについては、
以前に「消費税の仕組み(その5)」で説明したので
そちらをご覧いただきたいのですが、
一定以下の規模の事業者に摘要が限られた制度なのだと
ここからもお分かりいただけるでしょう。


消費税が課せられる売上を5つの事業区分に分類し、
その区分ごとに、この事業であれば課税仕入はこれくらい、
という「みなし」の割合を制度的に定めているのが特徴で、
計算上、その事業者が支払った仕入消費税の実額は使わず、
あらかじめ定められた「みなし仕入率」を
「課税売上高」に乗じる
という方法で
その事業年度の仕入れに係る消費税額を決める
というのが、その内容となっています。

それぞれの事業区分の定義、みなし仕入率については、
「国税庁タックスアンサー No.6509」に書かれていますが、
ここでも簡単に列記しておきます。


簡易課税制度の「事業区分」(みなし仕入率)

<第1種事業>
 卸売業 (90%)

<第2種事業>
 小売業 (80%)

<第3種事業>
 農林水産業・製造業・建設業
 電気業、ガス業、熱供給業及び水道業 (70%)

<第5種事業>
 不動産業・運輸通信業
 サービス業(飲食店を除く) (50%)
          
<第4種事業>
 その他の事業 (60%)



世の中で様々な事業者によって営まれている全ての事業を
この5種類のいずれかに当てはめるというのは
かなり乱暴な話ではありますが、
そもそもが小規模な事業者の簡便的な計算方法ですので、
そこをあまりややこしくすると本末転倒になってしまいます。

ただし、ある事業がどの区分に該当するかについては、
納税者と税務当局で認識が食い違うことがしばしばあります。

「これは第○種事業に該当する」と
誰が見ても明確なようなものであればいいのですが、
少しでも疑問点や不明点があるのであれば
後になって訂正の必要が生じ、
本税のほかに利子税などを支払うことにならないように
あらかじめ税務署に対して照会を行うか、
あるいは税理士に相談するなどしておくようおすすめします。


また、この「簡易課税」を受けるか否かは
事業者が自ら選択するシステムになっており、
摘要を受けたい場合には管轄の税務署に
「簡易課税制度選択届出書」を提出しなければなりません。

ですから、「簡易課税制度」の摘要を選べる事業者、
基準期間の課税売上高が5,000万円以下である事業者は、
「本則課税」と「簡易課税」の2つの方法の
どちらを選んだ方が有利なのかをきちんとシミュレーションし、
損をしないようにする必要があると言えます。


「第1種事業」の卸売を営む事業者を例にしましょう。

その期間の課税売上高が3,000万円(税抜)の場合、
この金額に「第1種事業」の「みなし仕入率」90%を乗じた
2,700万円(税抜)に対する消費税等の額、
即ち2,700万円×5%=135万円が、
売上に係る消費税額150万円から
仕入税額控除によって差し引かれる金額ということになります。

この事業者の利益率が実際にはこれよりも良くて、
課税仕入れの合計額が2,000万円のようなケースだと、
その事業者にとっては「簡易課税制度」を選択した方が
消費税の税額上、有利であると言えます。


なお、「簡易課税制度選択届出書」については
開業事業年度などの一部の場合を除いて、
適用を受けようとする課税期間の初日の前日、
つまりその事業年度の開始前に提出しなければいけません。

ここを間違えてしまうと、
わざわざ税額が高くなる方法で
消費税を計算することになってしまいます。

くれぐれも、提出忘れ、漏れの無いようにご注意ください


営んでいる事業が複数の事業区分にまたがる場合は、
それぞれの売上高が全体の売上高に占める割合に応じて
事業区分ごとの「みなし仕入率」を乗じて
仕入税額控除の金額を算出します。

ただし、1つの事業区分の課税売上高が
全体の課税売上高の75%以上を占めている場合
には
その事業のみなし仕入率を全体に適用してよいという規定や、
2つの事業区分の課税売上高の合計額が
同じく全体の75%以上となる場合
には、
その2種以外のみなし仕入率を用いずに
仕入税額控除額を計算してよいという規定もあります。

どの方法が一番税額が少なくなるのか、
しっかりと試算して一番適切な方法で計算するべきなのは、
言うまでもないことでしょう。

この辺までくると、どこが「簡便な」方法なのかと
文句の1つも言いたくなるかもしれませんが……


複数区分の事業を営む場合などの計算方法については、
ここに数式を羅列しても仕方がありませんし、
「国税庁タックスアンサー No.6505」に詳しいので、
そちらをご参照いただきたいと思います。



以上、はなはだ簡単ですが、
消費税の「簡易課税制度」についての説明を
ここで一旦の終わりとさせていただきます。

今回を以って、消費税の納税額を計算する方法については、
一通りの解説を終わらせたことになりますけれども、
消費税に関してはまだまだ細かい論点があります。

そういったものについては、また機会をみて、
このブログでも解説していきたいと思っています。


(その8)を読む< >(その6)から読む

カテゴリ : 税金・税法
テーマ : 税金 ジャンル : 政治・経済

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